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改めて、検察官に国家公務員法の定年後勤務延長規定を適用する閣議決定の撤回を求める会長声明


2021年(令和3年)8月24日
兵庫県弁護士会
会 長  津 久 井 進

 

 第1 声明の趣旨

 当会は、政府に対し、改めて、国家公務員法の定年後勤務延長規定が検察官にも適用されるとした内閣による解釈変更を撤回するよう求める。

 第2 声明の理由

  1.  2020年1月31日、当時の安倍内閣は、国家公務員の定年後の勤務延長を規定する国家公務員法第81条の3第1項を検察官には適用しないとの従来の政府解釈を変更し、検察官に同条項を適用するとの閣議決定(以下「本件解釈変更」という。)を行った。
  2.  その後、本年6月16日に閉会した第204回通常国会において、本件解釈変更とは異なり、検察官に国家公務員法の定年後の勤務延長規定を適用しないことなどを内容とした国家公務員法等の一部を改正する法律(以下「本法」という。)が成立し、改正検察庁法において検察官について任命権者の判断による定年後の勤務延長ができないことが明確にされた。
     しかし、上川陽子法務大臣は、2021年4月20日、衆議院法務委員会において、本件閣議決定に関し、「それ自体が誤っていたというものではなく、撤回する必要はないものと考えております。」、「解釈変更を前提としつつも、今後は検察官に勤務延長の規定を適用しないということを明文で定めたものでございまして、従来の解釈変更を改める解釈変更を行ったものではありません。」と答弁しており、上述のとおりの法改正は行われたものの、政府は現在でも本件解釈変更を改めていない。
  3.  当会は、2020年3月25日付「東京高等検察庁検事長の定年延長の閣議決定の撤回を求める会長声明」、2020年5月18日付「検察庁法の改正法案に反対する会長声明」及び2020年12月21日付「検察庁法の一部改正法案と同趣旨の法案の再提出に強く反対するとともに検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を強く求める会長声明」を発出し、本件解釈変更が、検察庁法の法解釈の限界を大きく逸脱した違法なものであり、法治主義の根幹を揺るがしかねず、「準司法官」である検察の独立性の維持、検察庁のみならず刑事司法制度への国民の信頼が大きく損なわれることについて繰り返し指摘してきたところである。
     本法が成立し、検察官について任命権者の判断により定年後の勤務延長はできないことが明確となったとしても、政府が、本件解釈変更が法解釈の限界を大きく逸脱した違法なものであることを認めそれを改めない限り、これが先例となり、今後も本件解釈変更と同様の法解釈の限界を逸脱した違法な解釈変更が繰り返されるおそれがあり、法治主義にとって重大な脅威となる。
     また,政府は頑なに本件解釈変更の撤回を拒否し,それにより何を守ろうとしているのか定かではないが、政府が国会の立法権を実質的に侵害した状態が維持されているとも言える現状は看過できるものではない。
     よって、当会は、政府に対し、改めて、本件解釈変更を撤回し、法治主義に基づいた法令の解釈運用を行うことを求めるものである。

以上

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