2025年(令和7年)2月28日
兵庫県弁護士会
会 長 中 川 勘 太
<声明の趣旨>
「日本の死刑制度について考える懇話会」(以下「懇話会」という)が2024年(令和6年)11月13日に公表した提言(以下「本提言」という)を踏まえ、改めて、政府に対し、国会及び内閣の下に死刑制度に関する公的な会議体を設置することを求めるとともに、その会議体において死刑制度に関する議論が尽くされるまでの間、死刑の執行を停止することを求める。
<声明の理由>
懇話会は、2024年(令和6年)2月29日、死刑制度廃止の国際的潮流や国内での議論の深化を踏まえ、各界及び各層からなる委員による真摯な議論を行って関係諸機関に対して死刑制度についての提言を行うことを目的として設立され、同年10月18日まで11回の会議を経たのち、同年11月13日に本提言を公表した。
本提言は、「早急に、国会及び内閣の下に死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体を設置すること」、「その会議体においては、現行の死刑制度に関するあらゆる情報を集約しつつ、幅広い視野から制度の問題点の調査を行い、この制度の存廃や改革・改善に関する個別的な検討に基づき、法改正に直結する具体的な結論を提案すべきこと」を求めながら、現行の死刑執行に至る手続及び執行方法に関しても具体的に改善の要否を検討すべき問題点があるとして、「その会議体においては、具体的な結論を出すまでの間、死刑執行を停止する立法をすることの是非、あるいは執行当局者において死刑の執行を事実上差し控えることの是非についてもこれを検討課題とすべきである。」と明言している。
当会は、これまで死刑が執行される度に、死刑執行に抗議し、死刑存廃に関する議論が尽くされること、その議論が尽くされるまで死刑執行の停止を求める趣旨の会長声明を繰り返して発出している。本提言は、まさに当会がこれまで求めてきた会長声明と同旨であり、大いに賛同するものである。
そもそも死刑制度については、その存置に賛成する立場、反対する立場の双方から、様々な論拠が示されている。当会の会員においても、死刑制度を廃止するべきとの意見、将来的には廃止するべきではあるが時期尚早であるとの意見、死刑制度は存置されるべきであるとの意見など、様々な意見を有する会員があり、死刑制度の是非について意見の一致を見るに至ってはいない。懇話会は、まさに死刑制度の存廃に関するそれぞれの意見を有する有識者を委員として構成し、議論を尽くした上で、本提言を全員一致でまとめ上げたものであって、我が国において避けてきた存廃の議論を公の場において議論し結論を出すことを求めており、袴田再審無罪判決を契機として国民の関心も高まっている今日において、正に時宜に適った公表であったと評価できる。
当会においても、今後、懇話会の提言の趣旨を踏まえ、この提言に真摯に対応していく所存である。