~国際ロマンス詐欺・投資詐欺被害について~
弁護士は、弁護士等の業務広告に関する規程で、事実に合致していない広告や誘導または誤認のおそれのある広告、誇大又は過度な期待を抱かせる広告の掲載を禁止されています。
いわゆる国際ロマンス詐欺やSNS等を通じて勧誘を受けた投資詐欺の被害事件を取り扱うというインターネット上の弁護士の広告の中には、弁護士法、弁護士職務基本規定、弁護士の業務広告に関する規程に違反する恐れのあるものが見受けられ、複数の弁護士会において問題となっています。掲載内容の問題例として、以下のものがあります。
1 取扱事例として、架空の事例が表示されている。
2 LINEで相談と表示されていたが、実際には事務職員がLINEのメッセージを作成しており、弁護士が相談対応していない。
3 他の詐欺事案で高額回収できたケースを、ロマンス詐欺での実績であるかのように表示し、どんな案件でも同じように高額回収が実現できると思わせる表現をしている。
実際にはこれら詐欺案件の被害回復は困難な場合が多く、被害金を回収できなかったり、ごく少額の回収にとどまることも多いのが実情ですが、広告主の弁護士に依頼すれば高額の回収が確実であると誤信させるような広告も見られます。そして、当該弁護士に依頼した際に、弁護士から十分な事件見通しの説明を受けず、広告のような相当額の回収が得られると誤信したまま、現実の回収見込みや業務内容に見合わない高額な着手金を弁護士に支払い、何ら成果を得られず、弁護士への支払が二次被害と評価されるような事態も報告されています。
このような広告を行っている弁護士の中には、業者と提携し、業者手配の者に処理を任せ、弁護士が事件処理に直接関わっていなかったり、その業者に自己の依頼者より支払われた着手金を支払っていたとして、弁護士法違反(非弁提携)で逮捕者も出ています。 事件の見通しの説明や着手金や報酬といった費用の決定、委任契約書の締結は、弁護士しか行えず、事務職員や提携業者に任せることは、弁護士法や弁護士職務基本規程に違反した対応となります。事件を依頼するにあたっては、弁護士から直接、事件見通しや費用の説明を受け、委任契約書の内容を確認して、契約を締結するようにして下さい。
~債務整理案件について~
債務整理案件でも、誰でも借金が減るかのようにうたう等、上記詐欺案件と同様に、誇大表現や誤認のおそれのある内容の広告を掲載している弁護士事務所が存在します。
1 弁護士との面談はなく、弁護士事務所の事務員らしき者とのLINEやり取りのみで債務整理が進んでいった、
2 債務額や収入、財産状況の聴取りや、その状況に応じた手段の説明がなく、自身の収入では遂行困難な内容で債権者と和解になり、弁護士費用も含めて支払に追われている
といった事案も見受けられます。
債務整理については、「債務整理事件処理の規律を定める規程」に基づき、受任の際に弁護士は依頼者と直接面談すること、債務の内容や債務者の生活状況等の聴き取りを実施すること、事件処理の方針や見通し、弁護士報酬やその他費用について説明すること、等が義務づけられています。これらが実施されずに契約締結に至った場合、依頼者が自己の債務の現状を把握できなかったり、破産や民事再生といった他の手続の検討がなされず、依頼者にとって結果的に経済的負担が大きい分割弁済が義務づけられてしまう等、トラブルにつながる可能性が高まります。
ロマンス詐欺等と同様の注意喚起となりますが、事件を依頼するにあたっては、弁護士から直接、事件見通しや費用の説明を受け、委任契約書の内容を確認して、契約を締結するようにして下さい。
ご自身の依頼する弁護士の対応が、上記の問題対応に該当し、弁護士に説明や報告を求めても回答を得られない等、弁護士への依頼で二次被害を受けたのではないかと不安を感じた方は、当該弁護士が所属する弁護士会にご相談を検討いただきますよう、お願い申し上げます。