2024年(令和6年)3月29日
兵庫県弁護士会
会長 柴 田 眞 里
法制審議会(以下「法制審」という。)は、2024年2月15日、同刑事法(情報通信技術関係)部会が報告した要綱(骨子)案(以下「要綱(骨子)案」という。)を賛成多数で原案どおり採択し、法務大臣に答申することを決定した。
法制審刑事法部会は、発展する情報通信技術を刑事手続に応用することを検討してきたところであり、当会は、この間、被疑者・被告人がオンラインで弁護人等と接見する制度の実現を求めてきた(2023年7月28日付けオンライン接見の法制度化を求める会長声明)。オンラインでの接見制度は、憲法上保障された被疑者・被告人の弁護人の援助を受ける権利の実現に資し、国民の権利擁護のために有益な制度である。また、とりわけ遠方で身体拘束されている被疑者・被告人への迅速な接見及びアドバイスという観点からは、現在の情報通信技術の発展を踏まえれば、必要不可欠な制度でもある。兵庫県においては、被疑者等の留置・勾留に特化した大規模収容施設である篠山留置施設や但馬地区に所在する警察署など、派遣される弁護士にとって遠方の施設が多く、適時適切な接見のためにオンラインでの接見制度を用いて、被疑者・被告人が継続的に弁護人の援助を受けられるようにする必要性が高い。
ところが今回の要綱(骨子)案は、オンラインでの接見制度は一切採用せず、他方で訴訟に関する書類を電子化し、令状手続、勾留質問あるいは弁解録取手続をオンラインで実施する規定を新設する制度の導入を求めている。オンライン手続以外でも、要綱(骨子)案には、捜査機関が電磁的記録を利用する権限を有する者に対して刑事罰をもって電磁的記録の提供を強制する電磁的記録提供命令の創設なども盛り込まれており、国民のプライバシー権など憲法上の権利への侵害も懸念されている。
このように、要綱(骨子)案は、全体として捜査機関や裁判所の便宜になる制度を追求する一方で、当事者である被疑者・被告人の防御権や弁護人の援助を受ける権利への配慮がないもので、到底許されない。
よって、当会は、この法制審が採択した要綱(骨子)案に反対する。