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憲法記念日にあたっての会長談話

2023年(令和5年)5月3日
兵庫県弁護士会
会 長  柴 田 眞 里

 

 市民のみなさまへ

 今日は日本国憲法の施行を記念する憲法記念日です。私たち市民が、憲法の意味や憲法が何のために制定されたかを考える絶好の機会です。

 日本国憲法は、立憲主義という考え方をとっています。すべての人々が個人として尊重されるという価値観のもとで、多数派の意思が優先されがちな法律によっても侵すことができない国の権力の限界を定めたものです。法律をもってしても個人の権利・自由を必要以上に制約することは許されません。

 3年間にわたって続いたコロナ禍においては、繰り返された緊急事態宣言の中で、憲法に緊急事態条項を創設しようとする議論がありました。しかし、まもなく新型コロナウイルスが感染症法上の5類に変更される現在からこの数年間を振り返ってみると、少なくとも、感染防止のための緊急事態条項の創設は必要なかったと言えます。既存の法律の改正等を行いつつ、一人ひとりが感染防止に努め、協力し合うことで、感染拡大の危機を乗り切ってきました。

 また、昨年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻に端を発して緊迫化した世界情勢は、1年を経過しても止む気配がありません。日本周辺の政治情勢も不安定化が進み、日本の安全保障や大災害の懸念などを理由とする緊急事態時における国会議員の任期延長規定創設や憲法9条の改正などを中心に、憲法改正の議論が活発に行われています。

 大切なのは、私たちが、憲法の問題を自分たち自身の問題としてよく考えること、そして、自分と違う立場や考え方があることを理解し互いに尊重し合いつつも、今後の方向性を議論していくことだと思います。時代の変化によっても変えるべきでないものが何であり、変えるべきもの、変えてもよいものは何なのかを、私たち一人ひとりがその場の「空気」に流されるのではなく、しっかり考えた上で、冷静に議論を行い、結論を出していくべきだと考えます。

 兵庫県弁護士会は、「基本的人権を擁護し、社会正義を実現する」という弁護士法に定められた使命を達成するべく、今後とも、あらゆる人々が個人として尊重される世の中を目指した活動や提言に真摯に取り組んでまいります。

 

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