意見表明

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兵庫県地域別最低賃金の大幅引上げを求めるとともに、中小企業への充分な支援を直ちに講じるように求める会長声明

2023年(令和5年)6月29日

兵庫県弁護士会     

会 長  柴 田 眞 里 

第1 声明の趣旨

1 兵庫県地方最低賃金審議会に対し、中央最低賃金審議会の答申にかかわらず、兵庫県地方最低賃金の大幅な引上げを答申することを求める

2 厚生労働省に対し、最低賃金引上げに伴う中小企業への充分な支援を直ちに講じるように求める

第2 声明の理由

1 2011年における兵庫県の最低賃金は739円、東京都の最低賃金は837円であり、最低賃金格差は98円であったが、2022年には兵庫県の最低賃金は960円、東京都の最低賃金は1072円であり、最低賃金格差は112円であって、10年間で1.14倍以上となっている。

  また、2011年における兵庫県の最低賃金は739円と大阪府の最低賃金は786円であり、最低賃金格差は47円であったが、2022年には兵庫県の最低賃金は960円、大阪府の最低賃金は1023円であり、最低賃金格差は63円であって、10年間で1.34倍以上となっている。

  最近の調査では、地域別最低賃金を決定する際の考慮要素とされる労働者の生計費は、多くの地方で自動車の保有を余儀なくされることもあり、都市部と地方との間で、ほとんど差がないことが確認されている。したがって、兵庫県においても、県北・淡路と神戸・阪神等の区域差を考慮することなく、大阪府の最低賃金額と同程度となるよう大幅な最低賃金の引上げがなされるべきである。

2 また、ロシアによるウクライナ侵攻の影響もあり、食料品や光熱費など生活関連商品やサービスの価格が全国的に急上昇し、電気料金など今後も値上げが予定されるものも生じている。労働者の生活を守り、経済を活性化させるためには、全ての労働者の実質賃金の上昇又は維持を実現する必要があり、この点でも最低賃金額が大きく引き上げられなければならない。

  しかし、兵庫県の最低賃金額は現在960円であり、2021年から2022年の上昇幅は過去最大となったものの、この賃金額を前提とすれば、フルタイム(1日8時間、週40時間、月173時間)で働いたとしても、月収約16万6080円、年収約199万円程度に止まる。

  そもそも、最低賃金は、「健康で文化的な最低限度の生活」を営むために必要な最低生計費を下回ることは許されず、直ちに、全ての労働者の生活を保障するため、今年度の兵庫県地方最低賃金については、大幅引上げの答申が必要である。

3 一方で、最低賃金の引上げにあたっては、現実に労働者に賃金を支払っている事業者、特に中小企業に対する手厚い支援が必要不可欠である。

  厚生労働省が実施する最低賃金引上げのための支援策である事業者に対する業務改善助成金の制度は、実際に支援されるか不透明なまま、事業者が設備投資を行わなければならず、最低賃金の引上げに対する不安を十分に払拭できていないと思われる。我が国の経済を支えている中小企業が、最低賃金を引き上げながら、円滑に事業を継続できるように、現在の「業務改善助成金」制度に加え、社会保険料の事業主負担部分の免除・軽減を始めとした社会保険料や税の負担軽減策などの支援策を直ちに講じる必要がある。

4 以上のとおり、当会は、兵庫県地方最低賃金審議会に対し、中央最低賃金審議会の答申にかかわらず、兵庫県地方最低賃金の大幅な引上げを答申することを求めるとともに、厚生労働省に対し、最低賃金引上げに伴う中小企業に対する充分な支援を直ちに講じるように求める次第である。

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