２０２３年６月３日から同月５日にかけて、自らがトランスジェンダー当事者であることを公表し、性的少数者の人権問題に取り組む大阪弁護士会所属の弁護士に対し、匿名の者から「男のクセに女のフリをしているオカマ野郎」「メッタ刺しにして殺害する」などと記載された殺害予告メッセージが断続的に送信されるという事件が発生しました。
こうした行為は、刑法上の脅迫罪に該当し、日々の弁護士業務や個人の平穏な生活を害する悪質な行為であるのみならず、その内容は、性的少数者に対する偏見、憎悪を顕著に具現化したものであり、ヘイトクライム（差別的動機に基づく犯罪）にほかなりません。
ヘイトクライムは、ある特定の集団に属する人々に対する差別的な動機に基づく攻撃であり、被害者だけでなく、被害者と同一の属性を有する全ての者に恐怖心を植え付け、同時に、差別意識を社会的に煽動・助長、固定化させ、対立を煽って社会を分断するものです。
本件は、トランスジェンダー当事者である個人を攻撃するにとどまらず、社会に生きるさまざまな属性を有する人々に対する差別意識を煽動・助長することにより、全ての人の安全・安心を脅かす行為です。個人の尊厳の尊重を基盤とする民主主義社会において、このような卑劣な行為を断じて許すことはできません。
当会は、本件事案に対し強い抗議の声を上げるとともに、トランスジェンダー当事者を含む全ての性的マイノリティの人々が差別されずに生きることができる社会の実現に向けて、あらゆる活動を通じて力を尽くす所存です。
２０２３年(令和５年)６月２１日
兵庫県弁護士会
会長 柴 田 眞 里