2022年(令和4年)2月22日
兵庫県弁護士会
会 長 津 久 井 進
大阪高等裁判所は、本日、画期的な判決を言い渡しました。
旧優生保護法の下で強制的に不妊手術を余儀なくされた被害者の方々が、国に対して賠償を求めた裁判で、第一審の請求棄却の判決を覆し、控訴審では国に対し賠償を命じる逆転の判決が言い渡されたのです。
同様の裁判が全国9つの裁判所に提起されましたが、本日の判決は、その中で初めての請求認容の判決でした。
これまで同種裁判における地裁の判決は、ことごとく20年の除斥期間を理由に被害者の請求を退けてきました。
これに対し、本日の判決は、旧優生保護法による被害の実態を直視し、被害者の救済のために、納得できる判断を示しました。すなわち、旧優生保護法による人権侵害は強度であること、国は障害者等に対する差別・偏見を正当化・固定化・助長をしてきたこと、被害者は訴訟提起の前提となる情報や相談機会へのアクセスが著しく困難な環境にあったことに照らし、除斥期間を適用することは著しく正義・公平の理念に反するとしたのです。
また、本日の判決は、被害者が旧優生保護法の下で一方的に「不良」と認定された上、非人道的かつ差別的な烙印を押されたともいうべき状態に置かれ、個人の尊厳が著しく損なわれてきたと指摘しています。
そして、この旧優生保護法の規定は憲法13条、14条1項に反して違憲であり、このような法律を立法した行為は違法であるとして、国の損害賠償義務を正面から認めたのです。
こうした真っ当な判断は、被害者救済に向けた大きな前進にほかなりません。現在、兵庫県在住の被害者の方々も大阪高等裁判所で審理中ですが、今日の判決は、今後の勇気と希望につながる心強い存在となるに違いありません。
国に対しては、今回の判決を真摯に受け止め、上告をせずに、全面的な解決に向けて舵を切っていただきたいと思います。長年にわたって苦しめられてきた被害者に対し、一刻も早く謝罪し、被害に見合った賠償を行っていただくことを強く望みます。
当会としても、誰もが人間としての尊厳が守られ、一人ひとりが大事にされる差別のない社会の実現を目指し、努力を重ねていく所存です。
以上