神戸新聞2025年4月16日掲載
執筆者:引野 力 弁護士
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購入したての新車が追突事故に遭いました。 修理後不具合なく使っていますが、将来売却する際、事故歴があるので売買価格が下がるようです。 相手方に価値が下がった分を賠償請求できないでしょうか。
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事故前の自動車の価値と修理後の価値の差を「評価損」といいます。「評価損」については、相手方は任意には支払いに応じないことが多いのが現状です。裁判では、一定の条件で認められたケースもあります。
まず、自動車の損傷が技術上の限界などにより修理をしても回復しない欠陥などが残ることで価値が低下したことを「技術上の評価損」といいます。技術上の評価損は外観や機能に障害があるので、賠償請求は認められやすいといえます。
これに対して、修理により機能などは回復しており、欠陥などは残っていないものの、事故歴・修復歴があるため、中古車市場において売買価格が低下することがあります。これを「取引上の評価損」といいます。
ご質問のケースでは、修理で機能などは回復しているようですので、「取引上の評価損」の有無・金額が問題となります。
裁判例上、取引上の評価損の有無・金額は、車種、走行距離、初度登録からの期間、損傷部位の状態・程度、修理の内容・金額などを総合考慮して判断されています。初度登録から数年以内、かつ走行距離の少ない外国車、国産高級車、または国産車のうち人気車種であって、 中古車販売業者に修復歴の表示が義務づけられる損傷である場合には、損害として認められやすい傾向にあります。
また、取引上の評価損の算定方法は、事故時の価格から修理後の価格を控除する方法、事故時の価格の一 定割合とする方法、修理費の一定割合とする方法などがあります。具体的な金額としては、修理費の10%や20%程度とする裁判例が多いです。
ご質問のケースは、購入したばかりの新車なので、損傷の程度などによっては、取引上の評価損が認められる可能性があります。
取引上の評価損の有無や妥当な金額を判断するには、過去の裁判例などを踏まえた専門的な知識が必要となりますので、お困りの際には、お近くの弁護士などの専門家にご相談ください。