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2025年

隣家の敷地の擁壁 崩れてきそうで怖い-民法でさまざまな事前対応策

 神戸新聞2025年3月5日掲載
執筆者:馬塲 伸佳弁護士

土地建物を所有する一戸建て住宅に住んでいますが、 隣家の敷地の擁壁にひびが入り、 雨が降ると水が噴き出します。 このままだと擁壁が壊れて崖崩れが起きそうで怖いです。今後、どうしたら良いでしょうか。

最初に、実際に擁壁が壊れてしまう前にできることについてご説明します。

まず、その擁壁の所有者が分かっているときは、所有者に対して予防措置を求めることができます。具体的には、土砂が崩れて建物が壊れるのを防ぐために、擁壁を修理したり、新しい擁壁に作り直したりしてもらいます。ただし、所有者が応じてくれなければ、予防措置を求める裁判を行う必要があります。

また、一定の条件を満たせば、相談者自身が自分で擁壁が崩れないよう予防措置などを行い、所有者に後で費用を造聚できるケースもあります(民法697条、同698条)。

2023年4月に施行された改正民法では、土地の所有者がきちんと管理していないような場合、裁判所に選任された「管理不全土地管理人」が、適切な措置を取ることができる制度ができました(同264条の9)。法律上、擁壁は土地に付合するので、この制度を利用するには、相談者が裁判所に「管理不全土地管理命令」の申し立てを行い、裁判所が決めた費用を納めて、管理不全土地管理人が擁壁の補修などをします。

一方、隣の家が長年空き家などで擁壁の所有者が不明な場合は、裁判所に「所有者不明土地管理人」を選任してもらい、その管理人に適切な対応をしてもらえる制度もできました(同264条の2)。この制度も、相談者が、裁判所に申し立て、費用を納入する必要があります。

最後に、事前の対応ができずに実際に擁壁が崩れてしまい、お住まいの建物が壊れたり、人がけがをしたりするようなときは、擁壁の所有者らに損害賠償請求ができる場合があります(同717条1項)。しかし、実際に損害が発生する前に対応した方が良いのは言うまでもありません。

所有者の調査、所有者判明後の交渉、さらには裁判所での手続きなど必要なことも多いので、早めに弁護士にご相談ください。

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