神戸新聞2025年2月19日掲載
執筆者:佐藤 佳実弁護士
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ペット禁止の賃貸マンションで猫を飼っていますが、先日、大家さんに知られてしまいました。しつけの行き届いた猫なので部屋を傷つけたことはありません。マンションから退去しないといけないのでしょうか。
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ペット禁止の賃貸マンションとのことなので、賃貸借契約書に犬や猫などのペットの飼育を禁止する条項(特約)が定められていると考えられます。ペット飼育禁止特約があるのに、いくらしつけの行き届いた猫であっても契約違反となります。
知られてしまった以上、飼育をやめるよう要請されるでしょう。かなり難しいと思いますが、例外的に飼育許可をもらえないか大家さんと交渉してみてはどうでしょうか。しつけの行き届いた猫であることや部屋が傷ついていないことを示すなどしてもよいかもしれません。
飼育許可がもらえない場合、猫を引き取ってくれる方を見つけるか、ペット飼育可の物件に引っ越すほかありません。この場合、猫を引き取る人が見つかるかペット飼育可の物件に転居するまでの期間だけでも飼えるよう大家さんと交渉することも考えられます。
大家さんから猫を飼うのをやめるように言われたのに、無視して飼い続けると、賃貸借契約を解除されてマンションの明け渡しを請求される可能性があります。賃貸借契約の解除が認められるのは、大家さんと借り主との間で信頼関係が破壊された場合に限られるとされていますが、ペット禁止という契約を破っただけではなく、やめるように要請されているのに猫を飼い続けている場合には信頼関係が破壊されたと判断される可能性が高いと思われます。
ペットを飼えるマンションに引っ越したり、明け渡しせざるを得なくなったりした場合には、猫を飼ったことによる部屋の損傷などについて原状回復費用を請求されます。猫を飼っていなければ必要のなかった部屋の脱臭作業の費用や壁のひっかき傷などの修復の費用がこれに当たります。
契約を守ることは、社会の基本的なルールです。ペットの飼育が禁止されている賃貸物件に住んでいる場合には、その部屋でペットを飼育することは明らかな契約違反です。どうしてもペットを飼いたいのであれば、ペット飼育可の物件に引っ越してからにしましょう。