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2024年

個人事業を運営 契約書は必要か-フリーランス新法で義務化

 神戸新聞2024年12月4日掲載
執筆者:小林 拓人 弁護士

個人で企業のホームページの作成をしています。取引先も中小企業が多いので、特に契約書などは交わさず、メールのやりとりで受発注をしています。今後、注意することはありますか。

 この(2024年)11月1日、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(いわゆるフリーランス新法)が施行されました。商品製造業務やシステム開発、コンサルティングなどを受注し、他に従業員や役員のいない個人事業主や一人社長をフリーランスとして保護する法律です。

 フリーランス新法は、取引の適正化と、就業環境の整備という二つの場面においてフリーランスを保護します。

 取引の適正化を巡っては、フリーランスへの業務発注者に対し、発注日、発注内容、納入期限、報酬額、報酬支払日などを書面やメールほかで示すこと(取引条件の明示)を義務付けています。メールだけで取引条件を示された場合に、取引先に不信感などがあれば、取引条件を記載した書面を求めることもできます。

 また、支払期限を納品日から原則60日以内とし、不当な受領拒否、報酬減額、返品、買いたたき、バーター取引の強制などを禁止しています。

 就業環境の整備については、発注者に対して、虚偽または誤解を生じさせるような募集表示を禁止するとともに、育児介護と業務の両立に対する配慮、ハラスメント対策に関する体制整備、契約解除の場合における弩日前までの予告通知なども義務付けています。

 これらが守られていないときは、取引の適正化に関係するものは公正取引委員会や中小企業庁に、就業環境の整備に関係するものは厚生労働省に違反の申し出をすることができます。また、トラブル全般に対しては、「フリーランス・トラブル110番」(☎0120・532・110) に相談することも可能です。

 注意すべきは、フリーランスがフリーランスに発注する場合にも、発注者であるフリーランスに対して、これまで述べた義務が課されるということです。このため、フリーランスの方も、フリーランスに発注する場合に守るべき事柄を知っておく必要があります。

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