神戸新聞2024年11月20日掲載
執筆者:松尾 梨紗 弁護士
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自宅に息子やその上司を名乗る者から電話がかかってきて、指定された預金口座にお金を振り込んだ後にだまされたことに気づきました。少しでもお金を取り返す方法はあるのでしょうか?
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振り込め詐欺救済法によって、金融機関から被害額の全部、または一部の支払いを受けられる可能性があります。
この法律では、犯罪に利用された預金口座(犯罪利用預金口座)の取引を停止(凍結)して被害者に支払う手続きが定められています。法律に「振り込め詐欺」とあるように、オレオレ詐欺、架空料金請求詐欺、融資保証金詐欺などの被害者はこの法律の対象です。振り込みが利用されていれば、強盗罪や横領罪などの被害者も同様です。
被害金の返還のためには、被害に気づいた段階で速やかに警察や振込先の金融機関に連絡し、振り込んだ預金口座などの取引の停止を依頼してください。犯人が預金口座などからお金を引き出した後では、取り戻せるお金が少なくなったり、ゼロになったりします。
被害者や警察から連絡を受けた金融機関は、その預金口座を調査し、犯罪利用預金口座と特定できれば凍結します。
預金口座に預金などが千円以上残っている場合、預金保険機構の「振り込め詐欺救済法に基づく公告」専用サイトで被害回復分配金の支払い手続き開始の公告が行われます。
被害者が分配金を受け取るためには支払い申請期間中に金融機関に申請を行う必要があります。支払い申請期間は、分配金の支払い手続き開始の公告から30日以上(運用上は90日)です。
この手続では、その預金口座の残高が分配金の支払額の上限となり、複数の被害者が申請している場合には、その口座の残高を全員で案分することになります。このように、だまし取られた全額を取り戻すのはかなり難しいです 。
いまだに多くの方が振り込め詐欺の被害に遭われています。息子などを名乗る人から電話で突然振り込みを依頼されたときは、落ち着いて、息子さんなどに電話で確認したり、警察に相談したりするようにしてください。