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2024年

「無料で求人情報掲載」頼んだら請求書届いた -解約通知、内容証明郵便で

 神戸新聞2024年8月7日掲載
執筆者:桑原 朋哉 弁護士

個人の自営業者です。求人広告会社から「キャンペーン中なので無料で当社の求人情報を掲載しませんか」との営業があり依頼しました。数ヶ月後に掲載料の請求書が届きました。支払わなければならないのでしょうか。

 近年、ハローワークなどに求人募集を出す事業者などに対して、求人広告会社を名乗る業者から、「無料で当社のサイトに求人広告を掲載しないか」という営業の電話があり、事業者が契約すると、後日、業者から広告掲載料が請求される、という事案が多発しています。

 契約書に小さく印字された「無料掲載期間内に解約手続きをしないと自動で有料掲載に移行」などの条項を根拠にした請求で、悪質性が高く、厚生労働省なども注意喚起をしています。

 このようなケースで、まず思いつくのがクーリングオフ(契約後一定期間内の解約)ですが、これは消費者を保護する制度なので、個人事業主を含む事業者は行使できません。また、消費者契約法4条による取り消しをはじめとする同法の規定も事業者には適用されません。

 一方で、民法上の錯誤、詐欺などを主張して、契約を取り消し、支払いを拒むことができる可能性はあります。しかし、錯誤、詐欺を主張するには、錯誤(誤信したこと)、詐欺(だまされたこと)などについての証拠が必要であり、かなり難しいのが実情です。

 請求を受けた事業者としては、まず、これ以上の掲載料が発生しないよう業者へ解約の通知を送ってください。解約通知は、日付と内容が残るように内容証明郵便を利用してください。後日、訴訟などになった場合の証拠にもなります。

 また、解約前の広告掲載料については、放置すると、延滞料も加算されます。錯誤、詐欺などによる取り消しを理由に支払いを拒絶する書面を送付する方法もありますが、業者から、執拗な督促を受けたり、訴訟を提起される恐れがあります。訴訟については、放置すると業者の言い分がそのまま認められてしまいますので、適切な対応が必要です。

 このように、ご相談の事案は、解約通知の送付だけで全面的な解決を図れるとは限りませんので、業者への対応に不安を感じるときは、早い段階で弁護士にご相談ください。

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