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2024年

勤務先から病院立ち寄り帰宅中に転倒、治療費は? -合理的と認定なら労災対象

 神戸新聞2024年6月5日掲載
執筆者:平尾 航一 弁護士

勤務先からバイクで帰宅中、かかりつけの病院で持病の治療を受け、病院を出た後で転倒してけがをしました。転倒場所は毎日通勤で通行する場所です。このけがの治療は労災保険で補償されるのでしょうか。

ご質問の場合、けがが労働者災害補償保険(労災保険)の「通勤災害」と認められれば、労災保険から治療費などの補償が受けられます。

「通勤災害」と認められるためには、負傷時の労働者の移動が、①「住居と就業場所との間の往復」②「合理的な経路及び方法による移動」-などであることを満たす必要があります。ご相談者は、勤務先から帰宅中に転倒しており、住居と就業場所との間の往復といえます。

合理的な経路及び方法による移動は、毎日通勤で使う経路なら通常は認められます。問題は病院に立ち寄っている点です。

一般的に帰宅途中の寄り道は、合理的な経路及び方法による移動ではありません。少し難しいのですが、寄り道を移動の経路の逸脱・中断といい、一度逸脱・中断するとその後は、合理的な経路及び方法による移動とは認められません。

これに対して、寄り道が通院や日用品の買い物といった法令で定められた日常生活上必要な行為などの場合、その後普段の通勤経路に戻るのであれば、合理的な経路及び方法による移動と認められます。もちろん、寄り道中や寄り道で通勤経路から外れている間(逸脱・中断している間)は認められません。

ご質問の方は、病院に通院した後、毎日通勤で通行する場所に戻ってからけがをしていますので、合理的な経路及び方法による移動中のけがとして他に問題がない限り通勤災害と認められ、治療費などが労災保険から給付されると思います。

なお、通勤災害に該当するけがの治療では、法律上、健康保険を利用することができません。健康保険を使った場合は、原則として健康保険組合などが給付した治療費をいったん病院に立て替え払いをし、労災保険に治療費を請求する必要があります(治療費の立て替え払いをしなくても健康保険から労災保険へ切り替えられる病院もあります)。

通勤災害と気づいたら早めに病院、勤務先などに相談してください。

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