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2024年

はねられた飼い犬 治療費や慰謝料は-近年は支払い認める判例も

 神戸新聞2024年5月1日掲載
執筆者:大野 龍史 弁護士

飼っている小型犬が散歩中、自転車にはねられました。すぐに病院に連れて行きましたが、腰の骨を折り、歩けなくなるそうです。家族同然のペットです。高額の治療費や、慰謝料を支払ってもらえるのでしょうか。

家族同然のペットがけがをして、不安だと思います。大けがの場合、治療費も高額になることが多いでしょう。

ぺットは、法律上は「物(財産)」なので、物を壊された時と同じように、ペットの飼い主は、加害者に故意または過失がある場合、損害賠償を請求できます。ただし、金額は、そのペットの時価額を限度とした治療費(自動車などで言うところの修理費)が認められるに過ぎず、慰謝料も原則として認められません。そのため、年をとったペットだと市場価値が低く、賠償をほとんど受けられない結果となることもあります。

でも、ペットに愛情を持って家族の一員として育てていて、単なる「物」とは違うと考える人も多いと思います。最近では裁判でも、ペットが事故で死傷し、損害賠償請求が争われ、ある程度、高額な治療費や慰謝料が認められるケースも出てきました。例えば、治療費について、家族の一員のように扱われているペットが死傷した場合、必ずしも時価額に限られるものではなく、当面の治療や生命の確保・維持に必要不可欠なものについては、時価額を念頭に置いた上で、相当の費用が認められる、と示した判例があります。

また、慰謝料についても、ペットが死傷して飼い主が精神的苦痛を受けたとして、数十万円の慰謝料が認められた裁判例もあります。慰謝料額は個々のケー スによって異なりますが、数万円から数十万円程度です。

最後に、慰謝料を認めた判決(2008年9月30日、名古屋高義判所)の一部を紹介します。「子供のいないAらは、B(犬)を我が子のように思って愛情を注いで飼育していたものであり、Bは、飼い主であるAらとの交流を通じて、家族の一員であるかのように、Aらにとってかけがえのない存在になっていたものと認められる」

相談者の方をはじめ、共感される方もいるのではないでしょうか。

ペットにかかる高額な損害賠償は認められにくいのが現状ですが、納得がいかない場合は、弁護士にご相談ください。

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