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取締役続けながら借金減らす方法は-任意整理か個人再生 検討を

 神戸新聞2024年4月17日掲載
執筆者:艸場 傑 弁護士

友人と会社を設立し、取締役として事業を行っています。会社の業績は順調ですが、プライベートで妻が病気になり、医療費や生活費が不足し、借金が膨らんでいます。取締役を続けながら借金を減らす方法はありますか。

 個人の方が借金を整理する「債務整理」には、「自己破産」「民事再生(個人再生)」「任意整理」があります。自己破産の場合は、裁判所の許可が出れば借金の返済をしなくて済みますが(免責)、職業の制限があり、役員もいったん、退任しなければなりません(会社法330条、民法653条2号)。 そのため取締役を続けながらの借金整理には任意整理か個人再生を検討することになります。

 任意整理とは、裁判所を介さずに、金融機関などの債権者と個別に、直接、借金の減免や支払期限の猶予について交渉する方法です。一般的に、借金を3年から5年程度の分割で返済し、将来の利息は免除、という合意の成立を目指します。ただし、強制力はなく、各債権者と合意できない場合もあります。

 一方、個人再生は、裁判所に申し立てて、最大で借金を5分の1に減らす制度です。ただし、厳しい条件があります。主な条件は、借金の総額は5千万円未満、破産の恐れがあり(債務超過)、将来にわたり安定した収入が見込まれることです。

 具体的には、借金の約5分の1を分割(通常は3年) で返済する「再生計画」を作成して、裁判所が計画を認可すれば、その後は、計画通りに返済すれば、基本的に残りの借金(5分の4) は免除されます。メリットは職業制限はなく役員を続けられること、住宅ローンを払い続けられることなどです。デメリットは手続きが複雑なことです。

 債務整理はどの方法を選んでも、いわゆるブラックリストに名前が掲載され、クレジットカードの利用などが制限されます。さらに、自己破産と個人再生を選択すると官報に掲載されます。個人再生の場合、会社の役員が個人再生手続きをしたこと自体は公表されますので、会社の経営に事実上の悪影響(会社自体の信用力の低下)が生じることも想定されます。

 どの手続きを選択するかは、負債額や債務者数、収入の安定性、資産状況など個別の事情に左右されますので、早めに弁護士に相談されることをお勧めします。

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