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従業員の「カスハラ」被害 雇用主はどうすれば-事実確認し、組織として対応

 神戸新聞2024年4月3日掲載
執筆者:永澤 徹 弁護士

従業員から「商品に問題はないのに、顧客から『返金しろ』『SNS (交流サイト)にアップしてやる』などと言われ、つらくて仕方がない」 と相談がありました。雇用主として、どう対応するべきでしょうか。

顧客などからの暴力や悪質なクレームといった著しい迷惑行為を「カスタマーハラスメント(カスハラ)」といいます。最近特に注目を浴びていて、東京都は「カスハラ防止条例」を制定する方針を固めたとの報道もありました。

カスハラとは、「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と厚生労働省作成の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」で説明されています。例えば、暴言や暴行は当然ですが、過剰な返金や謝罪、慰謝料の請求、土下座の強要、継続的、または長時間のクレームなどもカスハラに当たります。

そして、雇用主は、労働者の生命、身体などの安全に配慮すべき「安全配慮義務」を負っています(労働契約法第5条)。カスハラは、従業員が精神的に追い詰められてしまうことが多く、雇用主には、カスハラについて、労働者の安全が害されないように配慮すべき法的義務があるのです。

ご相談の件では、まずは従業員からしっかりと事実確認を行ってください。そして、提供した商品・サービスに瑕疵(かし)や過失がないにもかかわらず返金要求をされている、さらに実際に侮辱的および攻撃的な発言がなされていることが確認できることなどにより「カスハラ」に該当すると判断した場合は、毅然とした態度で、組織として対応してください。複数名あるいはチームを組んで組織として対応し、担当従業員一人に対応させないことが適切です。

今後のカスハラ対策としては、会社が組織として対応することを従業員に周知し、従業員のための相談窓口を設置しましょう。

カスハラによって従業員の精神面に不調の兆候があれば、産業医などによるアフターケアや医療機関への受診を促すなど、従業員の精神面に配慮すべきです。

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