神戸新聞2024年2月7日掲載
執筆者:寺西 惇展 弁護士
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所有地を資材置場として他人に貸したところ、 借り主が資材ではなく壊れた家財や家電などを大量に放置しています。 どんどん増え、 液体のようなものも漏れています。対応策を教えてください。
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土地の所有者や占有者(借り主など)には、土地を清潔に保つ義務があります。廃棄物を放置すると土地の所有者にも責任が生じます。さらに、所有者は撤去費用の負担や土地の価値低下などの不利益を被ることもあります。なお「廃棄物」とは、ごみなどの汚物や不要物などのことですが、今回は「廃棄物」の投棄と考えて良いでしょう。
土地所有者の責任として、廃棄物が放置(不法投棄)されないように対策をし、不法投棄を発見したら速やかに市町村などに通報しなければなりません。さらに、所有者が産業廃棄物の不法投棄に関わった場合は、懲役や罰金などの罰則が科されることもあります。
相談者が取るべき対応についてですが、まずは借り主に、廃棄物の撤去を促してください。そして、市町村や警察にも相談・通報しましょう。
借り主が廃棄物を撤去しない場合は、貸主は賃貸借契約を解除して、土地の明け渡しを求めることになります。借り主が任意に土地の明け渡しに応じない場合には、訴訟提起(裁判)をします。裁判で請求認容判決(勝訴)となったら、借り主が明け渡しに反対しても強制執行できます。
強制執行とは、執行業者に土地上の残置物(放置されている廃棄物)を撤去してもらい強制的に土地の明け渡しを行う手続きです。ただ、撤去費用などがかかり、強制執行の申立人(貸主)がいったん負担することになります。残置物の量や種類などにもよりますが、通常は少なくとも数十万円、場合によっては数百万円かかることもあります。この費用は、後から占有者(借り主)に請求できますが、占有者に資力がなければ回収は困難です。実際、申立人負担で終わることが多いです。
廃棄物を不法投棄された土地は資産価値も下がります。今後は、信用できない相手に土地を貸さない、契約書で廃棄物の持込みを明確に禁止する、廃棄物を持ち込まれたら早期に対応する-ことなどに留意してください。