神戸新聞2023年10月18日掲載
執筆者:安井 健馬 弁護士
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弟が家を借りるとき、保証人になりました。弟は体調不良で仕事を辞め、家賃を払うのも大変なようです。今後、弟が家賃を払えなくなったとき、どこまで責任を負う必要があるのか心配です。
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以前は保証人の責任が無制限だったため、保証人が支払いできずに自宅不動産まで失うことになるなど大きな財産的リスクを負っていました。
このようなリスクを避けるために民法が改正され、2020年4月1日以降に締結される保証契約において、個人が保証人になる場合、上限額の定めがないと保証契約が無効となりました。この上限額を「極度額」といいます。極度額は書面か電子データで定めることとされています。
弟さまの賃貸借契約および質問者の方の保証契約が同日以降に締結されていた場合、質間者の方は極度額までしか責任を負いませんし、仮に極度額の定めがなければ保証契約は無効となり、一切責任を負わなくてよいこととなります。
質問者の方の保証契約が20年4月1日より前の締結のケースでは、これが絶対といえる状況ではありませんが、以下のように整理できると思います。
まず同日より前に契約が締結されているが、まだ賃貸借契約期間内であれば、改正前の民法が適用されて、極度額の記載がなくても保証契約は有効であり、質問者の方は無制限の責任を負います。
同日より前に賃貸借契約が締結され、同日以降に契約が更新された場合、保証契約が新たに締結されたと評価できると、改正民法が適用されるので、極度額の定めがないと保証契約は無効となります。
例えば、賃貸借契約の更新契約書に保証人である質問者の方が署名押印していた時は、新たに保証契約が締結されたと評価されると思われます。一方、自動更新や法定更新など、保証契約が新たに締結されたとは評価できない場合には、以前からの保証契約が整続しているものとされ、質間者の方は無制限」製の責任を負うことになります。
20年4月1日より前に締結された賃貸借契約が同日以降に更新されている場合は、法的にかなり難しい問題ですので、弁護士に相談されることをお勧めします。