神戸新聞2023年9月6日掲載
執筆者:中廣 利貴 弁護士
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購入した覚えのない荷物が、宅配便で届きました。 どう対応すればいいでしょうか。
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まずは荷物の宛名が誰か、家族を含めて購入や贈答の心当たりがないかを確認しましょう。
宅配便の宛名が自分や家族の名前になっているにもかかわらず、購入した記憶や贈答品の心当たりがなかったり、請求書や振込用紙が同封されていたりしたときは、「送り付け詐欺」(ネガティブ・オプション)の可能性があります。
送り付け詐欺とは注文や契約をしていないにもかかわらず、金銭を得ようとして一方的に商品を送り付ける詐欺の手法で、近年被害が拡大しています。
送り付け詐欺の場合、特定商取引法に基づき、消費者は商品が届いた直後に、商品を処分(捨てたり、食べたり)することができます。いちいち販売業者に連絡する必要はありません。
また、業者から代金を請求されても、代金を支払う必要は一切ありませんし、商品を返品する必要もありません。
業者がしつこく請求してきたり、脅してきたりしたときは、「法律上、代金を支払う義務も商品を返品する義務もない」とだけ伝えて、以降の業者からの連絡は徹底的に無視して、消費者ホットライン(188)や警察に相談してください。
詐欺だと気付かず代引きなどで商品代金を既に払ってしまった場合でも、業者に対して返金を求めることができます。代金を支払ってしまった場合は、すぐに弁護士や消費者ホットラインに相談しましょう。
一方で、届いた荷物の宛名が自分や同居の家族などではなく、心当たりもない場合は、誤配達の可能性が高いです。誤配達だと気付いているにもかかわらず、あえて中身を処分した場合は、民法上の損害賠償責任や、刑法上の遺失物積領罪が間われることがあります。
また、誤配達と気付かずに開封し、中身を利用した場合も過失はあり、民法上の損害賠償責任を負うことがあります。故意はなくても、刑法上、疑われる可能性はあります。トラブルを避けるために、処分後に誤配達と気づいたときも、速やかに宅配業者に連絡しましょう。