神戸新聞2023年2月15日掲載
執筆者:渡邊 悠 弁護士
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10年前に息子がアパー トを借りる際に連帯保証人になりました。その後息子と音信不通になっていたところ、 急に息子の滞納家賃を支払うよう督促が舞い込みました。 私が全て支払わなければならないのでしょうか。
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一般的に賃貸借契約は一定の期間で区切られ、何もなければ自動的に更新されることが多いと思います。判例では、賃貸借契約で一度連帯保証を行うと、特段の事情がない限り、更新後の賃貸借契約から生じる賃借人の債務についても保証の責めを負うとされています。
他方で、賃貸借契約の解除などの措置を取ることなく漫然と滞納家賃を長期間累積させ、突然高額の滞納家賃を連帯保証人に請求したという事案では、連帯保証人が負う滞納家賃の支払い義務は滞納額の一部にとどまるとした裁判例もあります。
これらのことから、質問に対する回答としては、一度連帯保証契約書にサインし、その後息子と音信不通であるとしても、原則として息子の滞納家賃全額を支払わねばならないが、家賃の滞納期間や、その間の貸主側の対応などによっては一部滞納家賃の支払いを免れることができる可能性もある-というものになります。
なお、連帯保証人が思いもよらぬ多額の保証債務の履行を求められるという問題を解消するため、2020年4月1日に施行された改正民法では、賃貸借契約から生じる家賃などの債務について連帯保証契約を締結する際にも極度額(保証人が責任を負う限度額)を定めねばならないということになりました。
これに伴い、少なくとも20年4月1日以降に賃借人の連帯保証人になられた方に関しては、あらかじめ自身が責任を負わなければならない限度額が分かっていることから、予想していなかった多額の滞納家賃などの支払いを求められることはなくなっているかと思います。
では、それ以前に締結した賃貸借契約が同年4月1日以降に更新された場合、更新時に連帯保証契約について極度額を定める必要があるのでしょうか?この点についてはさまざまな意見がありますが、特段の事情がない限り更新時に極度額を定める必要はないというのが一般的な見解となります。