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2023年

隣から越境して伸びる木の枝を切除できるか?-改正民法では可能な場合も

 神戸新聞2023年2月1日掲載
執筆者:兵庫県弁護士会広報委員会

 隣の土地にある木の枝が私の土地まで伸びています。そのため、 隣の落ち葉で毎日掃除が必要になるなど困っています。この枝を私が切り取ってもよいのでしょうか。

 現行民法では、境界線を越える枝について、その木の所有者に、枝を切除させることができるとされていることから、自ら枝を切り取ることはできず、依頼しても切り取らない場合、所有者に訴えを起こして、切除を命ずる判決を得て強制執行の手続きを取る必要があります。

 しかし、これでは所有者が切り取ってくれない場合、常に訴えを起こす必要があり大きな負担でした。そこで、この(2023年)4月1日に施行される改正民法では、現行民法の原則を維持しつつ、次の三つの場合に、自ら枝を切り取ることができるようになります。

 1つ目は、「竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、その所有者が相当の期間内に切除しないとき」(新民法233条3項1号)です。催告したことを明確にしておくため、口頭で「枝を切ってください」と頼むのではなく、内容証明郵便などを送っておきましょう。相当の期間について法務省の資料では2週間程度とされています。しかし、例えば巨木の枝を切除するのに2週間程度で準備するのは難しいなど事案により相当とされる期間が変わってくると考えられますので、注意が必要です。

 2つ目は、「竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき」(同2号)です。木の所有者を知ることができない場合というのは土地の所有者が不明な場合が多いでしょう。不動産登記簿や住民票などで調査しても分からない場合が想定されます。

 3つ目は、「急迫の事情があるとき」(同3号)です。例えば、台風によって枝が折れて隣地の建物を壊してしまうような場合が想定されます。

 とはいえ、実際に切除可能な場合が明確ではなく、改正後の裁判例の蓄積によって明確化されてくることになりますので、枝の切除を考えられた場合には、事前に弁護士に相談されることをお勧めします。

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