神戸新聞2023年1月18日掲載
執筆者:井上 篤 弁護士
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飲み会で飲酒し、自転車で帰宅しました。 後日飲酒運転に当たると聞きましたが、本当でしょうか。また、飲み会の参加者が私に自転車を貸してくれていた場合、 その人は処罰されるのでしょうか。
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道路交通法65条1項で「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」と規定され、車両等」には軽車両である自転車も含まれます。よって、自転車でもお酒を飲んで運転することは禁止されており、いわゆる飲酒運転として処罰されます。
ただ、処罰については自動車の場合と少し異なります。飲酒運転には、酒気帯び運転と酒酔い運転の2種類があり、酒気帯び運転は、「呼気中のアルコール濃度が、1リットル中に0.15ミリグラム以上含まれる場合」をいい、酒酔い運転は「アルコールの影響により正常な運転ができない恐れがある状態で運転すること」をいいます。 自動車の飲酒運転の場合には、酒気帯び運転でも酒酔い運転でも処罰されますが、自転車の場合、酒気帯び運転では処罰されません。
自転車による交通事故でも死亡事故や大きな後遺障害が残る事故が発生しており、1億円近い損害賠償請求権が認められた判例もあります。予期せぬ事故に備えるために、自転車向けの損害賠償保険に加入しましよう。
飲酒運転の場合、酒を飲んだ本人だけではなく、これにかかわることも禁止されています。具体的には、道路交通法65条において、「飲酒運転をしようとする人に車両を提供すること」(同2項)、「飲酒運転をしようとすることが分かってお酒を勧めること」(同3項)、「飲酒運転をする車両に乗せてほしいと依頼すること」(同4項)が、禁止されています。
質問の飲み会参加者の行為は、「飲酒運転をする人に車両を提供すること」に該当するので、処罰されます。特に車両を貸す行為は厳しく規定されており、「お酒を勧めた場合」「乗せてもらった場合」は、運転手が酒酔い運転でないと処罰されませんが、車両を貸す場合には、飲酒運転した人が酒気帯び運転でも処罰されます。