神戸新聞2022年10月5日掲載
執筆者:池本 直記 弁護士
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成人年齢が18歳になりましたが、 養育費は子どもが18歳になるまでしかもらえなくなるのでしょうか。
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2022年4月から、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。成人年齢の引き下げは養育費支払いの終期に影響があるのでしょうか。
今回は、①既に取り決められた養育費の支払いの終期が、「成人に達するまで」など成人を基準にされている場合、成人年齢引き下げによる影響はあるか ②これから養育費を取り決める場合、成人年齢が引き下げられたことが影響するか-の2つについて説明したいと思います。
まず①について、「成人に達するまで」の養育費の支払いを合意した当事者の当時の意思は、今後変わるかもしれない法制度上の成人年齢を基準に養育費の支払いの終期を決めたものではなく、通常は、満20歳に達する日までという意味で合意したと理解するのが自然です。従って、文言上、「成人に達するまで」と合意していたとしても、「満20歳に達するまで」と解釈され、成人年齢の引き下げによる影響を受けるものではないと考えられます。
次に②について、養育費は、未成熟子に対して支払われるものなので、その支払いの終期は、子が社会的経済的にみて未成熟である期間によって決まります。そして、成人年齢が20歳から18歳になったからといって、子が社会的経済的に未成熟である期間が変わるわけではありません。ですから、成人年齢が引き下げられたことそれ自体は、養育費の終期の判断に直接は影響しないと考えられます。
成人年齢引き下げにかかる法律は、未成熟子の保護を現状から後退させる趣旨を含むものではないからです。
養育費の終期は、個々の事案ごとに、子が社会的経済的に未成熟といえる期間はいつまでかによって決められ、多くの事案で満20歳に達する月までとされています。この取り扱いは成人年齢引き下げ後も同様であると考えられます。