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2022年

自筆の遺言状 どこかに預けたい-保管制度利用し 法務局に

 神戸新聞2022年9月21日掲載
執筆者:阪口 亮 弁護士

 自分で書いた遺言書を自宅に保管していると盗難や改ざんの恐れがあるので怖いです。どこかに預けることはできないのでしょうか。

 遺言書は、法律で定められた方法で作成しなければなりません。その方法の1つとして、自筆証書遺言(遺言者が、遺言の全文、日付、氏名を自分で書き、押印して作成するもの)があります。

 自筆証書遺言は、遺言者が誰にも知られずに自分だけで作成することができますが、一方で遺言書の紛失亡失の恐れや、その内容を他者に改ざんされるリスクが伴います(これに対し、公正証書遺言は、公証役場で作成され、原本が保管されますので、改ざんなどの恐れはありません)。

 こうした問題点を解消するための新しい法制度として、2020年7月10日より、自筆証書遺言書保管制度(「保管制度」)がスタートしました。

 この保管制度を利用すれば、法務局に遺言書を預けることができます。生存中は法務局で保管されるため、遺言書の紛失など恐れがなく、第三者による改ざんなどを防止することができます。

 また、遺言者があらかじめ希望した場合は、死亡時に、特定の1人に対して保管の事実を通知してもらうことも可能です。加えて、本来は死後に必要な家庭裁判所での検認(遺言の状態を確認し、原状を保全する手続き)も不要です。

 このように保管制度を利用することにより、自筆証書遺言の問題点を解消することができますので、自筆証書遺言を作成する場合は、ぜひ保管制度の利用をご検討ください。

 ただし、保管制度はあくまでも遺言を適正に管理・保管するためのものであり、遺言の有効性を保証するものではありません。後の紛争リスクを抑えるために、遺言書の作成方式(自筆か公正証書かなど)や内容について、あらかじめ弁護士などに相談することをお勧めします。

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