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2022年

遺産分割協議はいつまでにすればいいですか?-円満解決のため早めに着手

 神戸新聞2022年9月7日掲載
執筆者:山口 達生 弁護士

 2か月前に父親が死去しました。 相続人は子どもらのみです。相続放棄の予定はないのですが、遺産の分割について話し合う気力がありません。遺産分割協議はいつまでにすればいいのでしょうか。

 被相続人の遺産を、相続人間でどのように配分するかということについて話し合うことを遺産分割協議といいます。この遺産分割協議は、被相続人が亡くなられた後いつでも行えるものであり、数十年経過した後に行った遺産分割協議も有効となります。

 もっとも、遺産分割においては、相続人それぞれの配分割合について、各自主張したいこともあるでしょう。

 例えば、被相続人の長男が結婚する際、被相続人が新築の戸建て費用を援助していたなど、一部の相続人が被相続人から財産を既に受け取っているとするとどうでしょうか。長男以外の相続人は、長男が相続する財産を少なくすべきだと考えるのではないでしょうか(このような主張を特別受益といいます)。

 また、例えば、被相続人が自営している店舗を、被相続人の長女が無償で手伝っていたなど、相続人が行った被相続人の財産形成への貢献があったとするとどうでしょうか。長女は、他の相続人よりも多く相続したいと考えるのではないでしょうか(このような主張を寄与分といいます)。

 しかし、「民法等の一部を改正する法律」が2021年4月に成立し、23年4 月には施行されるため、今後発生する相続においては、原則として被相続人が死去した後10年を経過すると、特別受益・寄与分を遺産分割において主張することができなくなります。

 特別受益や寄与分は、遺産分割の紛争が激化する原因の一つですので10年の経過により遺産分割協議そのものは早く終わるかもしれませんが、相続人間での不満が残ってしまい、協議が調っても以前のような親族間の付き合いができなくなるリスクがあります。

 このような事態を回避するためにも、早めに遺産分割協議に着手することをお勧めします。

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