くらしの法律相談(2017年~)

ヒマリオンの部屋ヒマリオンの部屋

2022年

勝手に私を保証人にして 姉が借金をしていた-責任発生の可能性も

 神戸新聞2022年7月20日掲載
執筆者:河上 亜紗子 弁護士

 所有する土地を姉に売却してもらうため、 姉に私の実印と印鑑証明書を渡したところ、 姉が勝手にこれらを使って私を保証人にして、 知人から借金をしました。 私に借金の保証人としての責任があるのでしょうか。

 保証人としての責任は、債権者と保証人との間で保証契約(主債務者が支払わないときには、保証人が支払うという契約)を締結することで発生します。この契約は、保証人のほか、保証契約を締結する代理権を有する代理人が交わすこともできます。今回の事案では、相談者がお姉さんに保証契約を締結する代理権を与えたわけではないので、相談者には保証人としての責任が生じないのが原則です。

 もっとも相談者の実印などを見て、お姉さんに借金の保証契約を締結する代理権があると信じた知人の保護も考える必要があります。そのため民法では、表見代理という制度を設け、一定条件の場合には、代理権を与えたときと同じような効果が発生することを定めています。

 具体的には、①その法律行為をする代理権を与えたかのような表示をした場合②その法律行為をする代理権は与えなかったが、別の法律行為をする代理権を与えた場合③かつてその法律行為をする代理権を与えたが、それが消滅してしまったケースで、相手方が代理人(と称する人物)にその代理権があると信じ、信じたことに落ち度がない場合-などに表見代理が成立するとされています。

 相談者は、お姉さんに土地売却の代理権を与えているため、②に当たります。 従って、知人がお姉さんに代理権があると信じ、信じるにつき落ち度がなかった場合には、相談者が保証人としての責任を負わねばなりません。知人に落ち度があったか否かについてはさまざまな事情を考慮しなければなりませんが、お姉さんが相談者の実印など所持していた事情は、知人に落ち度がないという判断に傾く事情となります。

 また、お姉さんが勝手にした行為であっても、責任を取らなくてはならないものと誤解して、相談者が知人に対し、支払う旨の意思表示をしてしまうと、後から相談者がお姉さんの行為 を認めた(法律用語で「追認」といいます)ということで、相談者が責任を負うことになりますので、注意が必要です。

この記事をSNSでシェアする