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2022年

トラックに追突され、けが病院で健康保険使えない?-基本的には利用は可能

 神戸新聞2022年5月4日掲載
執筆者:是澤 雄一 弁護士

 先日、 自動車を運転している際にトラックに追突され、けがをしました。近所の病院で治療を受けようとしたところ、受付で「交通事故の場合は健康保険を使えない」と言われましたが、そうなのでしょうか。

 交通事故でけがをしたときは速やかに治療を受けることが大切です。その際、医療機関で「健康保険は利用できない」と説明を受けることは少なくありません。しかし、交通事故でも基本的には健康保険の利用は可能です。その場合、保険者に「第三者行為による傷病届」を届け出る必要があり、これを提出することで、被害者は加入中の健康保険を利用できます。

 健康保険を積極的に利用した方が良いケースがあります。本事例では、追突事故なので被害者に過失がないと考えられますが、被害者にも20%の過失があったケースを例に説明します。

 前提として、自由診療の場合、健康保険利用よりも治療費が高額になる場合があります(診療報酬点数について、健康保険の場合は1点10円ですが、自由診療の場合は1点20~30円となる場合もあります)。また、治療費は保険会社が医療機関に対して直接支払うのが通常です(このような対応を「一括対応」と言います)。 

 以上を前提に、保険適用による治療費50万円(1点10円、自己負担3割の15万円は一括対応)、慰謝料50 万円、休業損害30万円の損害が発生したとします。その場合、被害者が最終的に受領する金額は61万円【(15万円十50万円十30万円)X80%-一既払い金15万円】となります。他方、自由診療による治療費100万円(1点20円、100万円は一括対応)、慰謝料50万円、休業損害30万円の場合、被害者が最終的に受領する金額は44万円【(100万円十50万円十30万円)X80%-既払い金100万円】となります。このように、被害者が最終的に受け取れる額に違いがあります。

 また、加害者が不明だったり保険に未加入だったりした場合、治療費を抑制でき、自己負担額を抑えることができます。

 もっとも、絶対に健康保険を利用した方が良いというわけではなく、けがによっては、保険適用外の治療を受ける必要性もあるため、状況に応じて柔軟に対応することが大切です。

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