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2022年

借地上の自分名義の建物売却に許可は必要か-地主の承諾が必要になる

 神戸新聞2022年4月20日掲載
執筆者:若原 暁昭 弁護士

 土地を借りて私名義の建物を建てて住んでいるのですが、このたび建物を売却しようと考えています。建物自体は私のものなので地主に許可を取る必要はないように思いますが、どうですか。

 相談者は地主から土地を借りて、その上に建物を建てています。借りた土地上の建物を売却する場合、建物だけでなく、土地を借りる権利も買い主に売却することになります。

 土地の借り主が土地を借りる権利を売却する場合は、地主の承諾が必要になります。地主に無断で建物を売却してしまい、さらに買い主が建物に居住したり別の人に貸して家賃収入を得たりすると、相談者は地主から賃貸借契約を解除されてしまう恐れが生じます。そうすると、相談者や買い主は、地主から建物の撤去や土地の明け渡しを求められることにもなりかねません。そうならないために、建物の売却に当たっては、地主の承諾を得る必要があります。

 では、地主が建物の売却を承諾してくれないとき、どういう方法があるでしょうか。

 建物の購入希望者が土地の賃料を支払えるだけの経済力のある人であるにもかかわらず、地主が売却を承諾しない際には、相談者は裁判所に、地主の承諾に代わる許可の申し立てをすることができます。

 裁判所が承諾に代わる許可をするに当たり、賃料の額を変えることや、地主に承諾料を支払うことが必要になったりすることがあります。賃料や承諾料の額は裁判所が決めるので、例えば地主が不当に高額の賃料や承諾料の支払いを要求して承諾を拒んでいる場合には、相談者は裁判所から承諾に代わる許可を得ることで、建物を売却することができます。承諾料は、買い主が相談者と夫婦や親子の関係にあるときには、減額されることがあります。

 ただ、裁判所に承諾に代わる許可の申し立てをしたからといって、必ずしも相談者が選んだ買い主に売却できるとは限りません。地主が裁判所に、自ら買い取りを希望する申し立てをしたときは、地主は相談者に相当の対価を支払うことにより、買い主になれることもあります。

 後でトラブルに巻き込まれないためにも、ご面倒でもまずは地主に話を通しておくことが必要です。

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