神戸新聞2022年4月6日掲載
執筆者:山下 悠太 弁護士
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先日インターネッ トでかばんを購入。売り主の口座に代金3万円を入金すべきところを、誤操作で30万円振り込んでしまいました。売り主は振り込みは有効で返さないと言っています。どうすればよいでしょうか。
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インターネット上でのかばんの購入も、対面で商品を買うのと同様、法的には売買契約によるものです。 本件では、売り主は相談者にかばんを讓渡し、相談者は売り主に3万円を支払う、という内容の売買契約が成立していたはずです。 従って、相談者から売り主の口座に振り込まれた30万円のうち、3万円については、売買契約という法律上の原因がある、ということになります。当然この3万円の返還を求めることはできません。
しかし、残りの27万円は、売り主には、相談者の誤操作で得られた、棚ぼた的な利益に過ぎません。他方、相談者には27万円の損失が生じています。
このような場合、27万円は法律上の原因のない利益と評価され、相談者は売り主に対し、不当利得返還請求として27万円の返還を求めることができます。
では具体的にどんな返還手続きをすればよいのでしょうか。
まずは相談者が振り込んだ金融機関に「組戻し」を依頼することが考えられます。組戻しとは、誤った振り込みをした際、受取人の承諾を得て、振り込み依頼前の状態に戻してもらう手続きです。組戻しには受取人の承諾が必要ですので、売り主が返金に応じない姿勢を貫くと、組戻しで27万円を返してもらうことはできません。
そこで、売り主に直接連絡を取って返還交渉をしたり、訴訟などの裁判手続きによって返還請求をしたりすることが考えられます。 そのためには、売り主の氏名と住所を特定しなければなりません。インターネット上での売買では、いずれも不明、というケースも多いでしょう。そのようなときでも、弁護士会照会などの手続きを利用することによって、売り主を特定できる可能性があります。
なお、受取人が、誤振り込みであることを知りながら、それを隠して金融機関窓口で払い戻しを受けた場合、刑事上、詐欺罪が成立することがあります。交渉の際には、売り主にこの点を指摘してもよいでしょう。