神戸新聞2021年8月18日掲載
執筆者:三谷 拓 弁護士
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公正証書を作成し養育費を支払っています。このたび再婚し、今月、第1子が誕生しました。再婚は養育費の減額事由に該当すると聞いたので、来月から養育費を減らそうと思います。問題ありませんか?
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結論から言うと、養育費を支払う側の判断で来月から養育費を減らすというのは、適切ではありません。
養育費を支払う側が再婚した場合、養育費減額が認められるかどうかは再婚相手の収入等の状況により左右されます。今回のように、再婚相手との間に子が生まれた場合、その子に対する扶養義務が生じるため、養育費の減額が認められる可能性は高いでしょう。
では実際に養育費を減額するためには、どのような手続きを取ればよいのでしょうか。
1つは元配偶者と再度協議を行い、養育費の減額を認めてもらった上で再度公正証書を作成するという方法です。
協議をしても折り合いがつかない場合は裁判所へ養育費減額調停を申し立てます。これも元配偶者と協議をする手続きにはなりますが、調停委員の仲介もあり、より円滑な話し合いが期待できます。
調停が成立しなかった場合は、自動的に審判という手続きに移行することとなり、それぞれの現在の状況を考慮して裁判所が適切な養育費を算定します。調停や審判によって養育費の減額が認められた場合は、裁判所が正式な書類を作成しますので、新たに公正証書を作成する必要はありません。
本件においては、公正証書を作成して養育費を支払っているとのことですから、以上のような適切な手続きをとらずに養育費を減額した場合、元配偶者から給与債権などへの強制執行を受ける可能性があります。
たとえ養育費の減額が認められる事情があったとしても、元配偶者との間で協議して減額することについて改めて合意するか、または審判で減額することが認められていない限り、養育費を支払う側の判断で勝手に減額することは法的に適切な方法ではありません。
勝手に養育費を減額してしまった結果、思わぬ不利益が生じる恐れもあります。まずは弁護士に相談することも検討してみてはいかがでしょうか。