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2021年

注文していない商品届き、捨てたが支払い義務は-「送り付け商法」購入必要なし

 神戸新聞2021年8月4日掲載
執筆者:千葉 真嗣 弁護士

3日前に注文していない新品のマスクが届きました。その日のうちに破棄したが、業者から身に覚えのないのであれば返品してほしい、処分した場合には代金を支払うよう請求がありました。請求に応じる必要がありますか。

 ご相談は、商品の注文や契約をしていないにも関わらず、金銭を得ようと一方的に商品を送り付け、返送または購入しない旨の通知をしない場合に購入の意思ありとみなして代金を請求する「送り付け商法」の典型例です。健康食品やカニ等の魚介類のほか、近年ではコロナ禍に便乗したマスクの送り付け商法が頻発しています。

 法律上、一方的に商品を送り付ける行為は売買の申し込みにすぎないため、期限内に返品したり、断りの連絡を入れたりしなかったからといって購入したことにはなりません。同封された請求書に「不要な場合は返送してください。返送がなければ購入したとみなします」などと書かれていても同様です。

 これまでは、商品があくまで業者の所有物であることから、届いた日から14日間(業者に引き取りを請求した場合は請求した日から7日以内)は、業者に商品の返還を請求する権利があったため、その裏返しとして、消費者はその間、商品を保管する必要がありました。

 しかし、一方的に送り付けられた商品を最大14日間も保管しなければならないというのは、消費者に過度な負担を強いるものであることから、特定商取引法が改正され、2021年7月6日に施行されました。

 これにより、一方的に商品を送り付けられた消費者は、直ちに商品を処分、廃棄することが可能となりましたので、相談の事例では業者の請求に応じる必要はありません。

 ただし、無用なトラブルを避けるため、今後は身に覚えのない商品はそもそも受け取らないのが一番です。もし受け取ってしまった場合には、送り主の連絡先や商品の写真を撮り、消費者生活センターや警察に通報しておくのがよいでしょう。

 なお、2021年7月5日までに受け取った商品については、この改正法が適用されませんので、お困りの場合は弁護士までご相談ください。

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