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2021年

成年後見制度の利用 どう手続きすればいいか-裁判所に必要書類を提出

 神戸新聞2021年7月21日掲載
執筆者:田崎 俊彦 弁護士

認知症高齢者を抱えており、今後、本人の財産管理について不安で悩んでいます。成年後見制度があると聞ききました。成年後見制度の申し立てを行うにあたりどのように準備を進めていったらよいでしょうか。

 認知症になると判断能力が不十分となり、自身で不動産や預貯金などの財産管理を行うことが難しくなる場合があります。財産管理以外にも、施設入所の手続きなどの契約を結ぶ場面、遺産分割協議に応じなければならない場面など、本人では対応が難しいことがあります。

 そこで、法律や福祉の専門家やご家族などが、成年後見人等として法的な支援を行う制度が「成年後見制度」です。

 成年後見制度には大きく分けて「法定後見制度」と「任意後見制度」があります。事例のように既に本人が認知症になっている場合には、前者の法定後見制度の利用を検討することになります。

 法定後見制度には判断能力の程度に応じ「後見」「保佐」「補助」という3つの類型があり、いずれに該当するかは最終的には裁判所の判断となります。

 申し立てを行うにあたっては、まずは自身が申立権者にあたるかについての確認が必要です。申立権者は、本人(事例では認知症になった方)、配偶者、4親等内の親族などに限定されています。申し立てを行う裁判所は本人の住所地(生活の本拠地)を管轄する家庭裁判所になりますので、該当する裁判所に対し、申立書や診断書などの必要書類を提出します。必要書類や費用については各裁判所のホームページ等をご覧ください。

 申し立てに要する費用ですが、原則として申立人が負担しなければならず、精神鑑定が行われることになった場合には数万円から10万円程度の費用を準備しておく必要があります。

 また、必ずしも希望する人が後見人等に選任されるわけではないこと、申し立ての取り下げには裁判所の許可が必要となること、後見等の開始後は安易にやめることができないことなどにも注意が必要です。

 本人では申し立てが難しい場合、弁護士や司法書士に依頼することができますので、まずは気軽に相談されることをおすすめします。

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