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2021年

交際相手から別れ話 慰謝料は認められるか-婚約、内縁関係の有無で判断

 神戸新聞2021年5月5日掲載
執筆者:勝又 陽香 弁護士

彼女と交際5年目、同居して3年になります。私は結婚を前提として交際を続けてきましたが、彼女から先日、突然に別れ話をされけんかになりました。別れるなら慰謝料を請求したいのですが、認められますか。

 単に交際しているにすぎない関係においては、一方が別れを告げたとしても、原則として他方に慰謝料の支払い義務が生じることはありません。単なる交際関係については、たとえ同居していたとしても法的に保護されるべき関係にはないと判断されるためです。

 ただし、交際相手と婚約している場合や交際相手と内縁関係にある場合、正当な理由なく一方的に関係解消されれば慰謝料が認められることがあります。

 婚約は将来夫婦になろうという当事者間の真摯な合意があれば成立し、形式は問われません。もっとも、裁判などにおいて婚約関係の成否が争われた場合には、客観的な事実関係(指輪の贈呈、結婚式場の下見・予約、両親・親族との婚約者としての顔合わせ、同居の有無や期間、生活費の負担状況など)を基に総合的に判断します。

 また内縁は、当事者の意思に基づき夫婦として生活している事実がある場合に成立し、結婚式の有無、両親や親族への報告、扶養配偶者としての届け出、子どもの有無、同居の期間、家計における生活費の分担といった事実を総合的に判断します。

 ただ、当事者同士が婚約関係または内縁関係にある場合でも、「正当な理由」がなければ、慰謝料は認められません。「正当な理由」の有無は、身勝手で信義にもとるといえる事情があるか具体的な事情に即して判断されますが、別の交際相手がいることを理由とした一方的な婚約破棄や内縁解消などは「正当な理由」がないと判断される可能性が高いといえます。

 本件では同居期間は3年ですが、結婚を前提にした交際だったということですから、まだ夫婦としての生活ではなく、内縁関係は認められないと思われますが、これまでの交際の経緯から、婚約関係にあり、交際相手の身勝手で信義にもとる事情があれば、慰謝料が認められる可能性もあります。

 どのような事情で結婚を前提とした交際が始まり、どのような理由で交際終了となったのかが重要ですので、詳細については弁護士に相談してください。

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