神戸新聞2021年3月17日掲載
執筆者:杉山 紀子 弁護士
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専業主婦で夫と小学生の息子が2人います。3カ月前に交通事故に遭い、その影響で家事などが十分にできません。私は会社勤めをしていませんが、休業損害を賠償してもらえる可能性はありますか。
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休業損害はけがなどのために働けなくなり減少となった場合に発生します。
専業主婦が、家事労働をできなくなっても現金収入の減少はありませんが、親族や家事代行業者に家事業務を依頼する場合など、家事ができないことによって損害は生じます。
そのため、会社勤めをしておらず、家族のために家事労働に従事している家事専業者であっても、休業損害を請求できることが、最高裁判所の判例でも認められています。
休業損害の算定基準については、自賠責保険会社に請求する場合は1日あたり6100円×入院・通院日数によって算出します。任意保険会社と示談交渉をする場合は会社の基準が提示されています。
しかし弁護士は、訴訟を提起する場合に準じて1日あたりの「収入日額」×休業日数によって算出することが一般的です。
収入日額は、家事専業者の場合、原則として、事故発生時の女性労働者の平均賃金をもって計算します。
今回の場合、2019年の厚生労働省の賃金構造基本統計調査により、女性労働者の平均賃金である388万円が基礎とされますので、相談者の「収入日額」は1万630円と算定されます。
次に、休業日数は、入院・通院日数や治療期間の総日数が基礎とされます。
もっとも、通院中でも、時間の経過とともにけがの症状が軽減し、家事業務を行うことができる場合には、事故が発生した日から治療が終了する日までの間で、相談者に実際に生じた家事業務の支障の程度を考慮し、減額して計算されることもあります。
ですので、治療が終了する日までは、治療に専念しながら、専業主婦としての毎日の家事内容に加え、期間中に依頼した家事業務の内容のメモを作成し、家事代行業者などを依頼した場合は領収証などを保管しておくことをお勧めします。