神戸新聞2021年2月3日掲載
執筆者:宿谷 昌広 弁護士
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結婚してまもなく5年、夫と3歳の子どもがいます。昨日、夫から突然、ほかに好きな人ができたから別れてほしいと言われました。不倫をした夫からの離婚なんて認められるのでしょうか。
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原則として、不倫をした配偶者からの離婚請求は認められません。
離婚の原因を作った配偶者を「有責配偶者」と言います。不倫は「不貞行為」と言い、民法上の離婚原因とされています(民法770条1項1号)。
自ら離婚原因を作っておきながら、相手が望まない離婚を請求するのは都合がよすぎますし、このようなことを認めるのは社会正義にも反します。ですから、有責配偶者からの離婚請求は原則として認められません。
しかし,有責配偶者からの離婚請求であっても、一定の条件を満たす事情がある場合には、認められることもあります。
まず夫婦の別居が長期にわたっていることです。「長期」とは、何年以上と決まっているわけではありません。別居期間が、婚姻年数と比較して、ある程度長期になっていると言える状況が必要とされます。
また、夫婦間に未成熟の子がいないことも条件の一つとされます。「未成熟の子ども」というのは年齢のみならず、さまざまな事情を考慮して判断されます。
さらに、離婚によって相手方配偶者が精神的・経済的に過酷な状況にならない場合もそうです。これには財産分与や慰謝料なども考慮して判断されます。
今回のケースは結婚して5年ということですので、少なくとも同じくらいかあるいはそれ以上の別居期間が必要です。
相談者は夫から突然別れてほしいと言われたことから、別居はしていないものと考えられます。3歳になる子どもがいるとのことですので「未成熟の子がいる」状況です。
また、まだ幼い子どもがいますので、直ちに離婚を認めてしまうと、相談者を精神的・経済的に過酷な状況に追いやってしまう可能性が高いです。
これらの事情を勘案しますと、夫からの離婚請求は認められないのではないかと考えられます。