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2021年

「騒音うるさい」と階下住人が慰謝料要求-「受忍限度」を総合的に判断

 神戸新聞2021年1月20日掲載
執筆者:横山 大樹 弁護士

分譲マンションに住んでいます。下の階の住人から、ピアノの音や子供の足音がうるさいとの理由で慰謝料として金30万円を支払うようにとの内容証明郵便が届きました。損害賠償金を支払わないといけないのでしょうか。

 足音や物音など「日常生活上の騒音」を全く出さずに暮らすことはできません。特にマンションでは生活騒音が漏れてしまうのは仕方のないことです。

 一方、ピアノの演奏音やオーディオの音楽など「日常生活以外を原因とする騒音」は、生活騒音と異なり、暮らしの中で必ず出てしまう音ではありません。管理規約により演奏が禁止されていることもありますので、禁止されていないか、禁止されていなくても時間指定がないかなどを確認しましょう。もし管理規約に違反している場合、損害賠償請求が認められる可能性が高くなると考えられますので注意が必要です(後述は、管理規約に違反していないことを前提に回答しています。)。

 生活騒音、生活以外の騒音のいずれにせよ、社会共同生活を営んでいる以上はある程度までお互い様として我慢しなければならない面があります。これらの騒音が外に漏れたからといって直ちに違法となり損害賠償しなければならないわけではありません。

 ただ、その騒音があまりにも度が過ぎている場合、難しい言葉で説明すると「一般社会生活を営む上で通常人が受忍すべき限度を超えている場合」には、違法とされ損害賠償金を支払う必要が生じます。

 従って本件では、損害賠償金を支払う必要があるか否かはピアノの音や子どもの足音などの騒音が、前述の「受忍すべき限度」を超えているかどうかによって決まります。

 では、どのような場合に受忍すべき限度を超えたと判断されるのでしょう。これは騒音の内容や程度、時間帯(早朝・深夜)、騒音によりどのような利益が侵害されているか、被害防止措置の有無といった諸般の事情を総合的に考慮して決まります。

 例えば、騒音のレベルが比較的小さくても、階下の住人に不誠実な対応を取って一切の配慮なく騒音の発生を継続していたりすれば、受忍限度を超えていると判断されることは十分に考えられます。

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