くらしの法律相談(2017年~)

ヒマリオンの部屋ヒマリオンの部屋

2020年

ひき逃げをした場合 どんな罰則を受けるのか-重い刑事罰と免許取り消し

 神戸新聞2020年12月2日掲載
執筆者:小林 正幸 弁護士

 最近ニュースなどでひき逃げが問題となっていますが、そもそもどのようなことをしてしまうとひき逃げとなり、ひき逃げとなった場合にはどのような罰則等を受けることになるのでしょうか。

 ひき逃げとは、車両等の運行中に人の死傷を伴う事故があった場合に、道路交通法72条に定める必要な措置を講じないで運転者らが事故現場を離れることです。

 同法72条1項前段は「交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員 (中略) は直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止するなど必要な措置を講じなければならない」と規定しています。

 ひき逃げの主体は「車両等の運転者その他の乗務員」であり、「車両等」には自動車だけでなく原動機付自転車、自転車も含む軽車両も含まれます。「運転者その他の乗務員」に、事故車両などの同乗者や単に現場に居合わせた者は含まれません。

 ひき逃げとなった場合、人身事故が当該運転者の運転に起因するなら、自動車、原動機付自転車等(自転車等軽車両は除く)の運転者には、10年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されます(道路交通法117条2項)。

 ひき逃げをした運転者には通常、過失運転致死傷罪(7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金/自動車運転処罰法5条)、または危険運転致死傷罪(15年以下の懲役/同法2条)などが別に成立するので、さらに重たい刑事罰を受けることになります。

 また、行政処分として、ひき逃げをすると35点の点数が付けられます。これにひき逃げの原因となった事故の点数が加算されることになります。35点の点数が付くと、それだけで少なくとも3年間の免許取り消し処分となります。ひき逃げは、非常に重たい刑事罰および行政処分を受けることとなるのです。

 たとえ逃げるつもりがなかったとしても、人身事故に関係した運転者が運転を直ちに停止しないか、または救護義務、危険防止措置義務を怠ることにより、ひき逃げは成立します。万一、人身事故を起こした場合でも、絶対に逃げることなく冷静な対応を心掛けてください。

この記事をSNSでシェアする