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2020年

住宅ローンの返済困難 個人再生制度とは-他の借金を減額、分割払いに

 神戸新聞2020年11月4日掲載
執筆者:佐々木 泰佑 弁護士

 コロナの影響で給料が減り、借金の返済もありますそのため自宅の住宅ローンについて毎月の支払いが困難となっています。個人再生という制度があると聞きました。どんな制度ですか。

 個人再生とは、債務の返済が困難になった場合に、裁判手続きにより返済額を大幅(総債務額の5分の1程度)に減額し、長期(原則3年間)の分割払いにすることにより個人の経済的更生を図る制度です。個人再生はあくまで分割払いをする手続ですので、安定した収入がある方でなければ利用できないことになっています。

 ほかにも自己破産と呼ばれる制度があります。自己破産により、原則すべての債務の支払い義務がなくなりますが、その反面、不動産など財産がある場合は処分しなければなりません。

 本件において、自己破産を利用すると住宅ローンやその他の借金の支払い義務はなくなりますが、自宅不動産を処分しなければなりません。これでは借金の支払い義務はなくなるもの、自宅という生活の基盤も失ってしまうことになります。

 そこで個人再生においては、自宅を手放さずに経済的更生を図れるよう「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」という制度が設けられています。

 この制度は、住宅ローンは従来通り(またはリスケジュールして)支払いを継続することによって自宅不動産を処分されないようにしつつ、その他の借金だけを個人再生によって減額の上、分割払いしていくことができるというものです。

 本件ではコロナの影響で給料が減少しているとのことですが、住宅ローン以外の借金を減額・分割払いとすることで、住宅ローンを支払っていくことができる見込みがあるのであれば、個人再生・住宅ローン特則を利用して、自宅不動産を手放すことなく、減額された債務を分割払いすることにより、それ以上の借金の支払いを免れる可能性があります。

 ただし、借金がどの程度減額されるか、また住宅ローン特則を利用できる要件(自宅不動産に住宅ローン以外の債務の担保がないことなど)を満たしているかどうかといった判断は複雑なものになりますので、一度弁護士に相談されることお勧めします。

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