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2020年

借地上の建物売却巡り地主が更地化を要求-土地貸借権譲渡 申し立てを

 神戸新聞2020年10月21日掲載
執筆者:松前 拓士 弁護士

 10年前に土地を借り建物を建てて住んでいます。転勤に伴い建物を売却しようと思い、地主に相談すると、「売却は認めない。更地にして出て行くように」と言われました。更地にしないといけないのでしょうか。

 裁判所から地主の承諾に代わる許可を得られれば、更地にする必要はありません。

 まず、土地を借りた際の契約内容について契約書などで確認してください。借地人(相談者)が地主との間で、建物を建てることを前提として土地を借りている場合は、建物所有目的がある土地の賃貸借として借地借家法の適用があります。

 本件のように借地上の建物を売却(譲渡)するためには、土地を利用する権利である賃借権も併せて譲渡する必要があり、賃借権を譲渡するためには原則として地主の承諾が必要となります。ただ、このような場合について借地借家法では、第三者(譲受人)が賃借権を取得しても地主に不利となる恐れがないにもかかわらず、地主が賃借権の譲渡を承諾しないときには、借地人の申し立てにより裁判所から地主の承諾に代わる許可を与えることができるという規定を設けています(借地借家法19条1項前段)。

 ですので、相談者は、地主から建物を第三者に売却すること(賃借権を譲渡すること)について認めないと言われたとしても、裁判所に対して地主の承諾に代わる許可の申し立てを行い、許可を得ることができれば、土地の賃借権譲渡と共に建物の売却ができることになり、土地を更地にする必要はなくなります。

 もっとも裁判所からの地主の承諾に代わる許可にあたっては、借地人から一定の金銭支払いを条件に付すことができるとされており(同法19条1項後段)、裁判所から借地人に対し地主に対する承諾料(名義書換料)の意味合いで一定の金銭支払いを条件とされることがありますので、注意が必要です。

 また、10年前に土地を借りた本件では考えにくいのですが、土地の賃貸借契約の期間が満了したような事案においては、地主に直接、建物の買い取りを請求できる建物買取請求権の行使が認められるような場合もあり得ます。借地上の建物の売却などを検討している方は、早めに弁護士に相談することをお勧めします。

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