くらしの法律相談(2017年~)

ヒマリオンの部屋ヒマリオンの部屋

2020年

公正証書に定めた養育費 元夫が支払わない-強制執行で給料差し押さえ

 神戸新聞2020年9月2日掲載
執筆者:池田 真理子 弁護士

このたび協議離婚をしました。養育費について月額10万円と定めて公正証書を作成しましたが、初回から入金がなく現在3ヶ月分の養育費が支払われていません。元夫に養育費を支払ってもらうためにはどうすればよいですか。

 まず公正証書に「毎月末日限り」といった支払期日と具体的な金額が定められているか、さらに「債務の履行を遅滞したときには直ちに強制執行に服する旨陳述した」といった内容の強制執行認諾文言という条項が入っているかを確認してください。これらがきちんと記載されていれば、給料差し押さえなどの強制執行が可能と思われます。

 差し押さえを行う対象は預貯金債権や不動産などでも可能ですが、養育費は将来にわたって支払いが定期的に続く債権なので、給料を差し押さえることが一般的です。養育費の強制執行の場合,債務者(元夫)の給料の2分の1を上限に差し押さえることができます。

 給料債権を差し押さえた場合、前記の上限の範囲内で養育費相当額を、勤務先会社から直接債権者(元妻)へ支払ってもらうことが可能となります。また、一度差し押さえを行えば、申し立て時点での未払い養育費を全て支払い終えたとしても、元夫が養育費の終期までに支払うべき金額の全てを支払い終えない限り、差し押さえは有効となります。

 ただし転職した場合などには、未払いが発生した時点で、再度転職先に対し給与債権の差し押さえを行う必要がありますので注意しましょう。

 強制執行をする場合、①公正証書正本②執行文③送達証明書を公証役場から発行してもらう必要があります。これらの書類と、戸籍謄本、住民票など必要書類を申立書とともに裁判所へ提出します。

 なお、離婚後、元夫がどこで働いているかわからないという方もいらっしゃるかと思います。2020年4月施行の改正民事執行法により、このような場合にも公正証書や調停調書などがあれば、年金や納税の記録から勤務先を照会することができる制度がスタートしました。その他の財産についても調査方法が拡充されています。公正証書がお手元にある方は諦めず、一度弁護士にご相談ください。

この記事をSNSでシェアする