神戸新聞2020年8月19日掲載
執筆者:湖山 達哉弁護士
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正社員として勤務している会社から突然、期間1年の契約社員に変更し、給料も20%減になりますと伝えられました。契約書への署名・押印を求められているのですが、断れないのでしょうか。
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会社(使用者)に正社員から契約社員への変更、減給という労働条件の変更を求められた事案ですが、労働条件は労働者と使用者の双方の「合意」によって決まるのが原則です。
労働契約法8条は「労働者および使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」と規定しています。労働条件の変更について労働者と使用者の合意を求めたもので、使用者による一方的な変更を許さない趣旨と言われています。
就業規則の変更によって労働条件を変更する場合も、原則として労働者と使用者の合意が必要です(同法9条)。ただし、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ就業規則の変更が合理的なものであるときは、例外的に労働者の同意なく変更される場合があります。
使用者が労働者の同意もなく一方的に労働条件を不利益に変更することは、合理的なものでない限り許されません。本件のように、使用者から契約書への署名・押印を求められても断ることは可能です。
また、使用者から求められ、労働者が断ることができず契約書への署名・押印をしてしまった場合でも、裁判所は労働条件を労働者にとって不利益に変更する場合は慎重に判断しています。
仮に、今回のケースで労働者が契約書に署名・押印をしてしまった場合でも、不利益の内容や程度、署名・押印に至った経緯や態様、使用者による事前の情報提供や説明の内容などに照らして、労働者の自由な意思に基づいてされたとされる合理的な理由が認められない場合には、合意があったとは認められない可能性があります(2016年2月19日最高裁判所第2小法廷判決)。
使用者から一方的に迫られてしまうと、断ることができない労働者も多いと思います。お困りの際は、なるべく早めに弁護士などの専門家に相談されることをお勧めします。