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2020年

交通事故の相手が車の修理代100万円請求-適正な金額かどうか検討を

 神戸新聞2020年8月5日掲載
執筆者:大垣 人士弁護士

先日、車を運転中、信号機のない交差点内で右折しようとした際に直進車と衝突してしまいました。相手方より修理代相当額として100万円を請求されているのですが、私は全額を支払わなくてはならないのでしょうか。

まず,請求されている金額が修理代金として適正な金額であるかどうかが問題となります。交通事故を原因として修理代金を請求する場合、適正な修理内容および金額である必要があります。不要な修理内容が含まれている場合や、一般的な金額に比べて明らかに高過ぎる修理代金などは認められません。したがって、相手方に対し修理代金の詳細な内訳や見積もり等を提示するよう求め、適正な修理内容および金額であるかどうかを検討する必要があります。

一方、適正な修理代金であったとしても、その修理代金が車両時価額を上回る場合には車両時価額分を賠償すればよいことになります。このような場合を経済的全損といい,例えば適正な修理代金が100万円だとしても、事故当時の車両時価額が50万円である場合には、車両時価額の50万円を賠償すれば足りることになります。

さらに、重要な要素として、過失割合の問題があります。過失割合とは、簡単に言うと、発生した交通事故について双方の落ち度(過失)がそれぞれどのくらいあったのかを数値化したものです。本件のように、信号機のない交差点内で起こった右直事故(右折車と直進車の衝突事故)における基本的な過失割合は80(右折車)対20(直進車)と定められています。

もちろん、これはあくまでも基本的な過失割合ですので具体的な事情に応じて修正が加えられることはよくあります。仮に本件事故の過失割合が80対20で、相手方車両の修理代金が100万円だとした場合、相談者は修理代金の8割を負担する必要があることになりますので、結局、80万円を相手方に支払うことになります。

ただし実際には、これまで説明した点以外にも考慮すべき事由は多くあり、相談者の車両にも損害が生じていると思います。

交通事故を起こしてしまった際は、相手方と直接交渉するのではなく、自分が加入している任意保険会社や弁護士に相談されることをお勧めします。

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