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2020年

元妻が離婚協議書に反し子と会わせてくれない-強制執行は文書の内容次第-

 神戸新聞2020年6月17日掲載
執筆者:髙田 南弁護士

 2年前に離婚しました。子どもと会いたいのですが、元妻が離婚協議書に反して会わせてくれません。どうすればよいですか。知人から間接執行という制度を用いたと聞きましたが、私も利用できますか。

 面会の実現は、離婚の際に作成された文書の形式や内容によってかなり異なります。

 家庭裁判所の調停調書や審判書が作られ、面会交流の頻度、時間、引き渡し場所等が具体的に記載されている場合は強制執行の申し立てができます。民事執行法172条の間接強制で物理的な強制ではなく、面会させる義務に違反すると1回あたり何万円かの制裁金を支払わなければなりません。その前に、家庭裁判所の履行勧告(強制力はありません)を相手方に送ることもできます。

 しかし、当事者間で作成した離婚協議書や、面会交流の内容が具体的に記載されていない調停調書しかないといった場合は、強制執行は認められません。強制執行はあくまでも相手方の義務の内容が明確に特定できていなければならないという理由からです。

 また、面会交流の内容が特定されている場合でも、面会交流を実施することが子どもの成長にとって悪影響となる特別な事情(病気や過大な心理的負担等)がある場合には強制執行が認められないことがあります。

 一方、強制執行申し立てができなくても、相手方が合理的理由もなく面会交流を妨害する場合は、新たに家庭裁判所に面会交流を求める調停を申し立てて強制執行を可能にしたり、これとは別に、地方裁判所に違法な面会交流の妨害を理由に損害賠償(慰謝料)を請求したりすることもできます。

 しかし、そもそも面会交流は子どもの成長に有益であることが前提となっており、家事事件手続法で家裁調査官の調査等を通し子ども自身の意向も考慮すべきこととされています。したがって、離婚合意の時点では想定できなかった子どもの成長や生活状況の変化によって、具体的な面会交流の内容は変わってくる可能性があります。

 家庭裁判所で、子どもの成長や意向、生活状況、双方当事者との関係を踏まえ、対立的でなく、前向きで有意義な面会交流を追求するのが望ましいと思います。

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