神戸新聞2020年6月3日掲載
執筆者:田頭 浩弁護士
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このほどの法改正により、2020年4月1日から、裁判の判決で支払いが命じられた債権について、債務者の財産に関する情報を明らかにする手続きが拡充されたと聞きました。主にどのような点が変更になったのでしょうか。
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裁判の判決で支払いが命じられた債権については、強制執行をすることができます。
もっとも強制執行するには債権者が債務者の財産を特定しなければなりません。債務者が自分の財産の情報を明らかにしてくれれば問題はありませんが、強制執行されるとわかっていながら自分の財産の情報を明らかにする債務者などまずいません。そのため裁判で勝訴しても債権の回収ができず、泣き寝入りということはよくあります。
そこで、債務者の財産に関する情報を明らかにする新たな方策として「第三者からの情報取得手続」が民事執行法に設けられ、4月1日に施行されました。
「第三者からの情報取得手続」(改正民事執行法204条以下)とは、第三者(銀行、市町村、日本年金機構など)から債務者の財産の情報を得ることができる手続きです。情報開示の対象となる財産は大きく分けて不動産、給与債権、預貯金などです。なお不動産に関する情報取得手続きについては、まだ施行されていませんので、以下には給与債権、預貯金などの情報開示について記載します。
給与債権に関しては、市町村や日本年金機構などから債務者に給与の支払いをしている会社の情報等を取得することができることになりました。情報を得られたら債務者が会社に対して有する給与債権に強制執行をかけることが可能になります。
預貯金等の情報取得に関しては、銀行や証券会社などから預貯金、上場株式、国債といったことに関する情報を取得できます。例えば預貯金であれば、銀行などから債務者が有する口座の情報(取り扱う店舗、種別、口座番号、調査時点での残高)の開示を受けることができるので、残高のある口座が判明すれば、預貯金に強制執行をかけることが可能になります。
判決を取ったのに債務者から支払いがされない、公正証書を作成したのに養育費が支払われないという方は、「第三者からの情報取得手続」を利用し強制執行によって回収することができるかもしれません。一度、弁護士にご相談ください。