神戸新聞2020年3月18日掲載
執筆者:加藤 孔明弁護士
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昨日、22歳の息子が万引をしたとして窃盗容疑で逮捕されました。知人から保釈制度を利用すれば今すぐにでも外に出られるのではないかとアドバイスをもらったのですが、保釈制度とはどのような制度でしょうか?
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保釈とは、簡単に言えば起訴されて刑事裁判になることが決まった後に、裁判所の許可で裁判が終わるまでの間、身体拘束(勾留)から解放されるという手続きです。今回の相 談のように、前日に逮捕されたという場合は起訴されていない段階ですので保釈制度を利用することはできません。
警察に逮捕されると、最大48時間の身体拘束の後、検察官に事件の管轄が移ります(送検)。検察官は必要に応じて24時間以内に裁判所へ10日間の身体拘束許可を請求します(勾留請求)。裁判所は勾留の要否を判断し、決定します。勾留決定の場合、逮捕された人は10日間の身体拘束(勾留)を受けることになります。10日間の勾留後、捜査の必要がある場合にはさらに最大10日間の勾留延長が認められます。その後、検察官が起訴するかどうかを判 断します。起訴された場合、保釈されない限り、裁判が終わるまで身体拘束が続きます(起訴後勾留)。
保釈請求は多くの場合、担当の弁護人(弁護士)が行います。弁護士は家族や関係者から聞いた事情を踏まえ、身体拘束から解放されるべき必要性などを裁判所へ伝えて説得します。裁判所は、保釈請求に対する検察官の意見を踏まえて、保釈の判断をします。保釈決定が出れば、保釈金を裁判所へ預けることで身体拘束から解放されます。なお保釈金は、保釈条件に反せずに裁判が終了すれば、後日返還されます。
相談事例の場合、万引ですので、前科の有無などの事情によっては、そもそも勾留されずに釈放されることもあります。勾留が認められた場合でも、勾留決定に対する不服申し立て(準抗告)などを行うことによって勾留決定が取り消され、釈放されることもあります。釈放がなされずに起訴された場合には保釈制度を利用することが可能となります。 家族などが逮捕されてしまった場合、速やかに弁護士へ相談してください。また、弁護士会が行っている当番弁護士制度の利用も検討してください。