神戸新聞2019年12月18日掲載
執筆者:平田 尚久弁護士
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契約社員として現在の職場で働いて3年になります最近、新卒の正社員が同じ職場に配属され、私と同じ仕事をするようになりました。彼には賞与が支給されるようですが、契約社員の私にはありません。これって不公平ではないですか。
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政府は、働き方改革の一環として、パートタイマー、契約社員、派遣社員など非正規雇用の処遇改善を目的に、「同一労働同一賃金」を推し進めようとしています。この方針に基づき、昨年国会でパートタイム・有期雇用労働法や労働者派遣法が改正され、その施行が2020年4月1日に迫っています(中小企業については改正後のパートタイム・有期雇用労働法の施行は21年4月1日から)。
「同一労働同一賃金」と聞くと、同じ仕事をしる人に同じ賃金を支払うことを義務付ける制度のように思われますが、必ずしもそうではありません。この政策の狙いは、「正規」と「非正規」との間の不合理な格差を埋めることにより、非正規労働者のモチベーションを高め、生産性を向上させることにあります。同じ業務を行っていても、待遇に差を設けることが不合理でなければ、同一労働同一賃金に反しないと考えられています。
例えば、会社の業務への貢献に応じて賞与が支給されている会社で、同じ貢献をしているのに、契約社員であることをだけを理由に賞与が支給されないのは不合理だと言えるでしょう。しかし、正社員にだけ業績目標が課されており、目標の達成度に応じて賞与が支給されるという制度であれば、目標を課されていない契約社員に賞与が支給されないとしても、必ずしも不合理な格差だとは言えません。
このように、賞与の支給に差があったとしても、それが違法といえるかどうかは一概に判断できないのです。
待遇は、原則として雇用主と労働者の交渉によって決定されます。自身の待遇に不満を感じているのであれば、まずは会社がどのような事業を展開し、どのような人材を求めているのか、しっかりと会社と話し合い、理解することが大事だと思います。会社側も、法規制に対応するだけでなく、上記の政策目標に沿って、非正規労働者のキャリア設計に配慮した魅力的な人事制度を用意することが求められていると思います。