くらしの法律相談(2017年~)

ヒマリオンの部屋ヒマリオンの部屋

2019年

勤務中に腕を骨折、労災保険の利用は-適用対象となる可能性高い-

 神戸新聞2019年10月2日掲載
執筆者:長濵 宏治弁護士

 私は、工場で作業員として勤務していますが、先日、勤務時間中に脚立から転落して腕の骨を折り、入院して手術することになりました。友人から労災保険の利用を勧められたのですが、どうしたらよいですか。

 「勤務時間中に工場内で脚立から転落し、腕の骨を折ってしまった」ということですから、労災保険の適用対象となる「業務災害」に該当する可能性が高いといえます。

 治療費については「療養補償給付」、けがで仕事を休んだことについては「休業補償給付」、もし障害が残ってしまった場合には「障害補償給付」というような補償を受けることができます。

 事業主には労災保険加入義務があり、その保険料も事業主が全額負 担すべきとされています。従って、相談者の方は、会社の人事部や総務部に対して「労災の申請手続き(療養給付といった労災保険給付などの請求を労働基準監督署長宛てに行う手続き)をお願いします」と申し出ることです。

 もし会社が応じてくれないのであれば、労働局(兵庫労働局労働基準部労災補償課)に電話をかけて、事情を説明した上で指示を仰いでください。

 厚生労働省のホームページから労災申請用紙をダウンロードすることもできますが、会社の人事担当者や社会保険労務士のように、雇用保険や労災保険といった労働保険業務になじみがない一般の人が、一から労災申請をするのは大変です。

 労働局や労基署のアドバイスを聞いてから、申請手続きを進めていくのがよいでしょう。

 例えば、相談者の方が入院しておられる病院が労災指定病院(労災保険指定医療機関)か否かで、申請の仕方や保険給付の態様が異なります。指定医療機関以外の場合は自分で費用を支払う必要があり、申請が通った後、現金で労働者本人に給付されます。一方、指定医療機関であれば、申請が認められると保険から直接病院に治療費が支払われることになり、自己負担がありません。

 しっかりと当局の説明を聞いておくことをお勧めします。なお、まず入院しておられる病院に相談するのもよいでしょう。

この記事をSNSでシェアする