神戸新聞2019年8月21日掲載
執筆者:田崎 俊彦弁護士
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14歳の息子が、友達とサッカーをしている時、ボールを通行人にぶつけ、その方は転倒して足を骨折しました。親として申し訳ない気持ちですが、私も法的に治療費などを支払う義務があるのでしょうか。
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結論からいうと、相談者は治療費など、けがをされた方に生じた損害を賠償しなければならない可能性が高いです。以下で説明します。
民法上、「自己の行為の責任を弁識する能力」を欠く未成年者が故意または過失によって他人に損害を加えた場合、当該未成年者は損害賠償責任を負いませんが、代わりにその未成年者を「監督する法定の義務を負う者」が損害賠償責任を負うとされています。親は親権者として未成年者を「監督する法定の義務を負う者」にあたるので、子どもが他人をけがさせた場合、治療費などの損害について、原則として損害賠償責任を負うことになります。
一概に年齢で区別されるわけではありませんが、未成年者が「自己の行為の責任を弁識する能力」を持つかの境界は、11歳前後から14歳前後といわれています。14歳の子どもがけがをさせたという本件については、この規定により、親も賠償責任を負う可能性が高いです。また、判例によれば、未成年者に「自己の行為の責任を弁識する能力」があっても、親が子どもに対する監督を怠っており、その監督義務と損害に相当因果関係があれば、親が損害賠償責任を負うものとされています。
いずれの場合も、監督義務を尽くしたことを立証(または反証)すれば賠償責任を免れることができます。ただ、事案により一概にはいえませんが、未成熟でまだまだ監督が必要な14歳という年齢であれば、監督義務を尽くしたという立証のハードルは極めて高いと思われます。
賠償責任が認められた場合、賠償の範囲は、入院・通院の治療費だけでなく、入通院交通費、雑費、慰謝料、休業損害など多岐にわたります。けがや後遺症の程度によっては非常に高額な賠償額になってしまいます。このような事態を避けるため、普段から子どもの行動に注意するとともに、いざというときのために個人賠償責任保険に加入することが望ましいと思われます。